取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「大人になるにつれて、父親との関係は希薄になっていく中でいつからかお金だけの関係になりました。威厳に固執する父親をいつからか私は恥ずかしいと思ってしまって」と語るのは、杏璃さん(仮名・43歳)。現在は実家から遠く離れた場所で旦那さまとの子どもとの三人暮らしをしています。
連れて行ってるではなく、全力で一緒に遊んでくれた父親だった
杏璃さんは京都府生まれで両親と7歳上に兄のいる4人家族。年が離れた兄妹で下が女の子ということもあり、小さい頃から父親には溺愛されていたと語ります。
「母親も可愛がってくれましたが、父親は特に。私は2つ目の就職で実家を出たのですが、その25年間で一度も父親から怒られたことはありません。
父は私が小さい頃には平日には顔を見ることはないくらい朝早くに出て、深夜に帰って来るような仕事の忙しさだったんですが、週末にはいつも遊びに連れて行ってくれました。それも嫌な顔を一切せずに、『行くぞ!』とノリノリなんですよね。私に付き合っているというよりも一緒に全力で楽しもうとしてくれる姿は大好きでした」
杏璃さんの反抗期は中学から高校の初めにかけて。家に帰らない時期もあったなどかなりの荒れ具合だったとのこと。母親との言い合いはしょっちゅうだったそうですが、その時期も父親は静観していたそう。
「中学の受験のシーズンだったのに茶髪にしてピアスを開けて、友人の家で寝泊まりをして…と散々な荒れ具合でしたね(苦笑)。母親の顔を見るとイライラしてくるので顔を合わせたくなかったんです。それでたまにしか帰らないと、『どこに行っていたんだ』とさらにケンカになる。私が中学の頃には兄は大学で家を離れていたので3人の家の雰囲気は最悪でした。でも、父は見えていないのかなってくらい普通に話しかけてくる感じで。覚えている限りでは反抗期に父親のことを嫌いに思ったことは一度もないですね」
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