取材・文/ふじのあやこ
家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。~その1~はコチラ
今回お話を伺ったのは、大阪の市外にある特別養護老人ホームで働いているめぐみさん(仮名・35歳)。大阪府の郊外出身で、両親と2歳上に兄のいる4人家族。小さい頃から優しかった祖父が入院したことにより、母親は仕事を辞めて2人の世話をすることに。学生だっためぐみさんも祖父母の世話を自ら手伝うようになりますが、父親、そして兄は何もしてくれませんでした。
「祖父が退院してからのほうが大変で、祖父の下の世話なども母がやっていました。私はお世話をしていたというより、一緒に過ごしていたぐらいです。でも、それさえも父と兄はしませんでした。祖父母の気持ちになったら、一人息子の父がまったく会いに来ないことはショックですよね。隣に住んでいるのに……」
祖父母の介護をする母親を助けるため、シフト制の仕事を選択。2人が亡くなるまで母親と必死に支え続けた
短大を卒業しためぐみさんはその後、ビジネスホテルに就職。フロントスタッフとして働き出します。ホテルを選んだのにもある理由があったと語ります。
「シフト制なので、平日まったく動けなくなるということがないと思い、選びました。その頃には祖父は一度心筋梗塞で倒れてから元気になっていたんですが、気力がどんどんなくなっていき、ほぼ寝たきりになっていました。ケアの人に来てもらうこともあったけど、世話のメインは母親です。だから、少しでも手伝えるように、平日はずっと1人という環境を作りたくなくて。母親の気持ちが折れちゃうんじゃないかなってとにかく心配だったんです」
就職して1年後、祖父が他界。それを追うように、祖母も1年も経たずに亡くなってしまったと言います。
「祖父は心臓の病気で、祖母は肺炎で亡くなりました。本当に後を追うような感じでしたね。祖父が亡くなった時は、とにかく祖母を、母を支えなければと思っていたけど、祖母が亡くなった時は心が空っぽになった感じがしました。次に何をしたらいいのかわからなくなったんです。元から何かやりたいことや目標もなかった。そんな自分が浮き彫りになった感じがしました」
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