取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「私が子供のことを乗り越えられたのも、兄がまたお店を始められたのも家族が支えてくれたから」と語るのは、唯さん(仮名・39歳)。彼女は現在、小学生の子供を育てながら、お兄さんの経営する飲食店の手伝いをしています。長い髪を後ろに一つに束ね、化粧気はあまりないものの目鼻立ちがハッキリしており、凛とした雰囲気を感じます。
休日の楽しみは家族でのキャンプ。アクティブな両親、面倒見のいい兄が大好きだった
唯さんは京都府出身で、両親と6歳上に兄のいる4人家族。両親はともに働いていたそうですが、休みの日にはよく遊びに連れて行ってもらっていたと言います。
「うちの両親はともにアクティブで、アウトドアが大好き。週末にはよくキャンプに出掛けていました。それに、物の収集癖があるのか、実家はマンションだったんですが、1つの部屋がキャンプグッズでいっぱいになっていましたね。最後には、父方の祖父母が近所に住んでいたこともあって、祖父母の家の物置まで両親のキャンプグッズで溢れていましたから」
両親は遊びに対してはとことん楽しむタイプ。しかし教育熱心とは言い難く、勉強を見てくれたのはいつもお兄さんだったそう。
「クラスにも5教科はまったくできないけど、図工とか音楽とか副教科が得意な子っていたじゃないですか。うちの両親は絶対にそんなタイプ。夏休みの宿題も頼んでないのに、牛乳パックを使って貯金箱を作るというのがあったんですが、一緒に作っていたのに最後には父親がひとりで作っていました。色んなところに引き出しがあるような、絶対に小学生が作るクオリティーじゃないものが出来上がってしまって。先生に怪しまれましたから(苦笑)。
そんな両親は、ドリルなどの勉強はちっとも見てくれない。勉強でわからないところがあると、兄が教えてくれていました。兄は当時地元でかっこいいと評判になっていたぐらいカッコよくて、それに優しかったから私は小さい頃から大好きでしたね。毎日ずっと兄の後ろにくっついていました」
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