地元に帰りたい思いに気づいてくれた父から送られた1枚の写メールには
上京後に就職した職場を半年も経たずに辞めてしまった愛さん。その後テレアポや日雇いの仕事でつなぐことに。周りに知人がいないこともあり、彼への依存が強くなってしまった影響で振られてしまったと言います。
「カフェレストランのキッチンとして採用されたんですけど、地元のようなアットホームさがなく、テキパキと作業をこなす上の人のイライラをぶつけられ続けました。少しのミスがあると大声で怒られたり、作業を一切ふってもらえなくて一日皿洗いや掃除をさせられてたり……。仕事に向かおうとするとお腹を下すようになってしまって、辞めることにしました。
私はそんな辛さから彼に依存してしまって。彼も新しい仕事で悩んでいたことなんてちっとも気付かずで、振られるまで彼の気持ちの変化にさえ気づきませんでしたね」
彼にも振られ、やりたい仕事も続けられず、東京に知り合いもいない。しかし嘘をついて上京した後ろめたさもあり、両親に帰りたいとは言えなかったそう。上京して3年目に差し掛かった頃に一度父親が別の用事で上京。そこでも弱音は吐けなかったそうですが。
「父親と大人になってから初めて2人で食事をしたんですが、会話が途切れないように必死でしゃべりましたね。仕事も、東京の生活も楽しいと言ってしまいました。でも、父親はそんな嘘に気づいていたんですよね。その数か月後に実家のリフォームをするという内容でメールと1枚の画像が届きました。そこには私の部屋もあって、帰ってきていいんだって言われているような気がしました」
その後、愛さんは母親からの言葉もあり、地元に戻ることを決意。地元での再就職にも成功し、リフォーム後の部屋で生活を続けます。そして、20代後半の時に同じ職場で働く男性と結婚。現在は彼の転勤で神奈川に在住しています。愛さんは当時を振り返り、「東京に住んでいる時に帰省時には私の部屋は物置になっていて、もう帰る場所がないと寂しくなっていたんです。リフォーム後には、私が小さい頃から使っていたタンスが新しい部屋に置かれていて。本当に嬉しかったです」と語ります。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。