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暮らし

【娘のきもち】口に出すと泣いてしまう。父の思い出を話せるようになるまで、3年が必要だった~その2~

取材・文/ふじのあやこ

娘のきもち・その2

家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。~その1~はコチラ

今回お話を伺ったのは、大阪府で4歳、2歳と2人の息子を育てている専業主婦の恭子さん(仮名・37歳)。広島県の島育ちで、両親と5歳上、3歳上に兄のいる5人家族。短大を卒業した恭子さんはそのまま神戸に残り、在学中に取得した幼稚園教諭の資格を活かし、神戸の幼稚園に就職します。その間も兄との2人暮らしを継続。学生時代と違い、多忙な日々で帰省もあまりできなかったものの、母親との連絡は密に取っていたと言います。

「元々子供が好きで短大に進学した時には幼稚園の先生になりたかったんです。就職先は希望していたところだったんですが、仕事の大変さは想像以上。本当に1日中バタバタで、家に帰ってからもプライベートの時間はあまりなく、次のお遊戯で必要な飾りを作ったり、ピアノの練習をしたりしていましたね。でも、学生時代と同じように親とは連絡を取り続けていました。島には長男が戻っていたこともあり、就職で島に戻って来いとかも言われなかったかな」

父の病名は胃ガン。告知を受けてからも父は最後まで諦めることなく、勇敢に戦い続けた

恭子さんは23歳の時に母親から父親の病気の報告を受けたそう。しかし最初は本当の病状を教えてもらえませんでした。

「離れて暮らしていて心配をかけたくないからという理由でした。最初は体調を崩したという報告ぐらいだったと思います。

父はどうやらずっと胃の調子が悪かったようで、胃薬などでだましだまし生活を続けていたみたいなんです。年に1度の健康診断をパスできていたこともあって。でも薬でごまかせなくなってきて、病院に行ったところ、胃ガンだと告知を受けたそうです。でも、治るって父親も家族も信じていました。告知された時から、父は日記をつけていたんです。『こんな症状が出た』とか、『こんな薬を使った』とか治療内容を綴っていました」

本当の病名を伝えられ、恭子さんはすぐに帰省。父の側にいようと何度も帰省する子供たちを母親は止めたそう。その理由はというと……。

「その時には母親は余命を医者から聞かされていたんですが、母親は気丈に振る舞っていましたね。父が治ると信じているのに、『あまりに子供たちが自分の様子を見に来ると、もっと深刻な状態なんじゃないかって思うから』ということでした。その理由には納得できたので、神戸での仕事も続けて、1か月に一度くらいのペースで父に会いに行っていました。

でも、父は病気が発覚してから10か月で亡くなってしまいました。同じ年に長男の結婚が決まって、父親はとても喜んでいたのに、結婚式にも間に合わなくて。兄の希望で、結婚式は父が眠る地元のお寺で行いましたね」

地元で母を支えながらも父のことを口に出すことはできなかった。誰かに話すことで父は生き続ける、そう思えるまで3年が必要だった

母親が1人になったことで、恭子さんは島に戻ることを決意。母親から一時反対を受けたそうですが、翌年に仕事を辞めて、島の幼稚園で再び働き始めます。

「今しか戻れないと、それに今したいことをしようって思ったからです。神戸に出て、就職をして同じ関西に長く付き合っている彼氏もいました。神戸に残る理由もたくさんあったけど、それでも地元に、母の側にいたいと強く思いました。母親は『戻って来る必要はない』と最初は言いましたが、しばらくすると『戻ってきてくれてありがとう』って言ってもらえましたね」

母との2人暮らしがスタートしますが、まだ父親がいなくなったことを受け入れられない恭子さんは父親の思い出話ができなかったそう。父の話を口に出すことができるまで3年が必要だったと言います。

「父のことを口に出すと、まだまだ泣いてしまう日々でした。一度70代ぐらいのよそのおばあちゃんと話す機会があったんです。そのおばあちゃんは親族を亡くしていて、『話せるようになるまで3年かかるよ』と言われていて。本当にそうでした。3年経った辺りから自然に父の話ができるようになり、家族といっぱい思い出を語りたいって思えるようになりました」

恭子さんは27歳の時に関西との遠距離恋愛を続けていた男性と結婚。その時には一番上の兄が実家の横に家を建てており、結婚生活は大阪で送ることになります。小さい頃の思い出を聞くと厳しかったことばかりを話していた恭子さんですが、「昔は厳しくて、他のお父さんの優しい話とかを聞くとその家が羨ましいことも多かった。でも、厳しい中に究極の愛があったんだなって今は思います。親元を離れてから恥をかかないようにしてくれていたんだなって。今子供を持って、より一層その思いが強いですね。今一番悔しいのは、その恩返しが父親にできないことですかね」と語ります。

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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