取材・文/ふじのあやこ
家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。~その1~はコチラ
今回お話を伺ったのは、神奈川県で小学生になる子供を育てながら、飲食店で働いている愛さん(仮名・42歳)。長野県出身で、両親と2歳上に姉のいる4人家族。小さい頃からぽっちゃり体型で内気だったこともあり、中学時代はいじめに遭いますが、1日も学校を休むことなく卒業。いじめに遭いながらも学校に行き続けた理由は親に心配をかけたくなかったから。その後は友人に恵まれ、母親の影響から製菓の専門学校へ進学して、パティシエになります。働き出してからも実家を出ることを一度も考えたことがなかった愛さんでしたが、25歳の時に初めての彼氏ができ……。
「彼は高校の同級生で、卒業してから共通の友人を通じて再会して恋愛関係になりました。学生時代は同じクラスにもなったことはないし、数回しか話したことしかないような子で学生時代は全然好きじゃなかったですよ。でも、連絡先を交換して、2人で遊ぶようになって付き合うことになりました。初めての彼氏で、のめり込んでしまいましたね。振り返ると本当に若気の至りです……」
初めての彼氏は生活の中心に。嘘で固めた理由で両親に上京を説得してしまい
地元で付き合っている時はお互い実家だったこともあり、どちらかの家に入り浸るような関係にはならなかったそう。しかし、彼が転勤で東京に行くことになった時に離れたくなかった愛さんは一緒に上京することを決意したと言います。
「彼は商社で働いていて、東京に転勤になったんです。こっちにいる時は週に2度くらいのペースで会えていたのが、月に1回会えるかどうかになるなんて考えられなかった。当時は仕事より、家族より、彼でしたね。彼について来てほしいなんてまったく言われていないのに、誰にも相談なくお店に辞めることを伝えて、上京の準備を着々と進めていました」
親への報告は仕事を辞めるタイミングで行い、嘘で固めた理由で両親を説得。先に上京していた彼の家の近くで新生活をスタートさせたそうです。
「親には絶対反対されると思っていたので、どうしても働きたいお店があると嘘をつきました。一度自分の腕を試してみたいって。両親は笑顔で納得してくれました。それに一人暮らしで必要な家具も自分で揃えると言ったのに、冷蔵庫やオーブンレンジを買ってくれたんですよ。『家で練習することもあるだろう』と言われて、さすがに罪悪感がありましたね。でも、本当に東京ではそこそこ大きなお店で働き始めることができたんです。でも、そこの人間関係がうまくいかずにすぐに辞めてしまって……。さらには彼氏に好きな人ができて振られてしまいました」
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