取材・文/ふじのあやこ
家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。~その1~はコチラ
今回お話を伺ったのは、関西の飲食店でパート勤務をしながら、1人の娘を持つ兼業主婦の真美さん(仮名・36歳)。大阪府出身で、両親と一卵性双生児の妹がいる4人家族。中学生の時に異性から“双子のかわいくないほう”と言われ、これ以上比べられたくない思いから妹を避けるようになります。
「妹が悪いわけじゃない。そんなのはわかっています。でも、何事にもおおらかで、私よりも両親とうまくいっている姿などを見ると、どうしても嫌な気分になってしまうんです。兄妹と違って、家に見た目がまったく一緒な、比べられる存在が常にいるんですよ。当時は家族というより、ライバルといった気持ちが強かったのかもしれません」
好きになった男性と付き合い始めたのは妹。離れるためには実家を出るしかないと思った
別々の高校に進学した後はしばらく気持ちも穏やかだったそう。しかし、真美さんのアルバイト先に後を追うように妹が働き始め、さらにあることがきっかけで2人の仲はこじれていきます。
「実家から少し離れたところにスーパーやレストランが入った複合施設があったんですが、私はその中の総菜屋でアルバイトをしていました。そしたら数か月後に同じフロアにあるパン屋で妹がアルバイトを始めて……。双子だということは親しい人にしか言ってなかったのに、一瞬で広がりましたよ。
そして、妹は同じ施設で働く、私が気になっていた男性と付き合い始めました。どう頑張っても男ウケするのは妹のほう。もちろん妹にその人のことが気になっているとは一度も伝えたことがないので、その事実は知らないと思います。その時は何も行動できなかった自分のことを棚に上げて、ここでも妹を嫌うことでしか気持ちをもたす方法がなくて。いなくなってほしいとそこまで考えていた気がします」
その後、真美さんは逃げるように名古屋の大学を受験し、実家を出ます。妹は地元の専門学校に進学したことで2人の接点はなくなったそう。
「一人暮らしを始めてからは母親からの連絡はちょくちょくあったんですが、父親や妹との接点はまったくなくなりましたね。妹も私の態度に気づいたのか、高校の卒業間際は会話さえありませんでした。実家にいた頃から家族で外食する時なども何か理由をつけて参加していませんでしたから。引越しの時に妹と話す機会があったんですが、表面的な会話のみ。引越しは荷物も少なくて、家電などは引っ越し先に届けてもらうようにしていたので、父親の運転で少しの荷物を運んだくらいです。母親もついて来てくれる予定だったんですが、私は両親を独り占めされる辛さを知っていたから。家に残ってもらいました」
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