オフロードには興味がなかったが、ジムニーで悪路を走行する楽しさを知る
GTS-Xは手元から失われましたが、まだまだローンが残っていたため、和年さんは手頃な価格のクルマを探します。程なくして友人より「フェアレディZを買わないか?」と持ちかけられ、渡りに船と購入。納車されたのは二代目フェアレディZ(S130型)で、グレードは『280ZX』。キャブレターやエキゾーストマニホールド、マフラーなど、当初より色々と手を加えられており、燃費は酷く悪いものでした。
280ZXのパワーや速さは楽しかったものの、2by2(
1990年前後、巷にクロカン(クロスカントリー)やRV(レクリエーショナルビークル)といった、オフロード向け四輪駆動車のブームが訪れます。専門店がいたる所にオープンし、休日ともなれば多くの人がキャンプ場などのアウトドアレジャー施設に訪れました。
「私のクルマ仲間でも、ブームに刺激されて四駆を買った人が多かったのですが、なぜかみんな(スズキの)『ジムニー』でした。オフロードに興味は無かったのですが、みんなが楽しんでいれば自分も参加したくなるじゃないですか。それで私も(二代目)ジムニーを購入しました。乗ってみると、これがすごく面白い! 軽自動車ってこともあって、それまでジムニーを見くびっていたのですが、実際には他のクロカンやRVがスタックする悪路や雪道を軽々と進んでいくんです。本当の性能はスペックじゃないんだなって、目から鱗がボロボロ落ちました」
ジムニーと一緒に泥だらけになりながら、林道や悪路での走行を楽しむ和年さん。GTSニスモとジムニーの2台を使い分け、クルマ趣味を漫喫します。そしてジムニーの購入から4年が経過し、それまで調子の悪かったトランスミッションが破損。他にも不具合を抱えた箇所が多々、あらわれます。
「散々、林道や悪路を走行しましたからね。ヤレ(経年による劣化)が早く進行するのも無理はありません。仲間のジムニーのコンディションも似たようなものでした。この頃になると、みんな仕事や家庭の環境が変わり、これまでのように一緒に出かけることが難しくなっていました。四輪駆動車ブームが終わったこともあり、ここらが引き際かなと、ジムニーを手放しました」
和年さんの勤める大手家電企業は、バブル終焉の影響と経営戦略の失敗によりパーソナルコンピューター製造部門の収益が著しく悪化。将来性の無さを感じ取った和年さんは転職を決意します。
【後編】へ続きます!
取材・文/糸井賢一(いといけんいち)
ゲーム雑誌の編集者からライターに転向し、自動車やゴルフ、自然科学等、多岐に渡るジャンルで活動する。またティーン向けノベルや児童書の執筆も手がける。