浅井長政(演・中島歩)とお市(演・宮崎あおい)の祝言。(C)NHK

ライターI(以下I):『豊臣兄弟!』第10回では、お市(演・宮崎あおい)が北近江の領主浅井長政(演・中島歩)に嫁ぐことになりました。

編集者A(以下A):尾張を統一し、駿河遠江三河を領する今川義元(演・大鶴義丹)を倒した織田信長(演・小栗旬)は、7年かけて美濃の斎藤氏を放逐して岐阜城に入ります。ここで、上洛を目指して北近江を領する浅井氏と同盟を結ぼうという流れです。結婚した時期は、永禄10年(1567)設定になっています。『豊臣兄弟!』で時代考証を担当している黒田基樹先生の著書『お市の方の生涯』(朝日新書)は『どうする家康』にあわせて刊行された本ですが、永禄10年ということになっています。2008年刊行の宮島敬一さん著の『浅井氏三代(人物叢書)』(吉川弘文館)では、お市と浅井長政の結婚の時期には7つの説があると列挙していましたから、この間に整理されたんだろうと思います。

I:『お市の方の生涯』はわかりやすくて読みやすいので、お市の方に関心のある方は、これから先の展開に合わせて最良のテキストかと思われます。

大河ドラマで描かれるお市の結婚

A:さて、お市の方といえば、『おんな太閤記』(1981年)では夏目雅子さんが演じました。藤岡弘さん(現・藤岡弘、)演じる信長が上洛する途中に小谷城に立ち寄るという設定でした。すでに茶々(子役/演・志喜屋文)が歩いていましたから、永禄7年結婚説を採用していたのかもしれません。

I:1992年の『信長 KING OF ZIPANGU』(以下『信長』)は緒形直人さんが信長を演じた作品ですが、お市の方は鷲尾いさ子さんが演じました。「背が高い」というのを強調した展開になっていた記憶があります。鷲尾さんといえば、お市を演じる数年前から『鉄骨飲料』という今は無き飲料のCM出演が思い出されます。

A:「鉄骨飲料」懐かしいです。確か、鷲尾さん、CMソングのCDを出していましたよね。なんか、もう一度飲みたくなりました(笑)。この作品で、浅井長政を演じたのが辰巳琢郎さん。この他、浅井長政役は、杉良太郎さん(『国盗り物語』1973年)、風間杜夫さん(『おんな太閤記』1981年)、宅麻伸さん(『秀吉』1996年)などが演じています。

I:知的で優し気な俳優さんばかりですね。

A:お市の方と浅井長政といえば、今後、小谷城を舞台とした「戦国史の悲劇」が展開されるのですが、今後も過去作との比較をしながら見ていきたいと思います。

榎木孝明さんが浅井久政役で登場

I:2006年の『功名が辻』では大地真央さんがお市を演じ、榎木孝明さんが浅井長政を演じました。同作は山内一豊(演・上川隆也)の妻千代(演・仲間由紀恵)が主人公ということもあり、お市と千代が馬駆けして遠出する場面などが描かれました。

A:榎木孝明さんといえば、『豊臣兄弟!』では浅井長政の父浅井久政を演じて、婚礼の場でいかにも腹に一物を抱いていそうな表情を浮かべていました。

I:なんだか意味ありげでしたよね。『豊臣兄弟!』は大胆なアレンジが「見どころのひとつ」ですから、お市にふりかかる災難をどう描いてくるのか、視聴者を「なるほど」と満足させてくれるアレンジになっているのか、注目ですよね。

「私の初陣」と誇りを見せるお市

お市に呼び出された「弟猿」小一郎(演・仲野太賀)。(C)NHK

I:さて、『豊臣兄弟!』ですが、お市の方が秀吉(演・池松壮亮)に話があると呼びましたが、秀吉は小一郎(演・仲野太賀)を遣わします。お市が「弟猿か」といったのには笑いました。弟猿ですよ、弟猿。そんな猿、今までいなかったような気がします。

A:歴史的エピソードに主人公をどう絡ませるかというのは常に難しい作業なのだと思いました。前述の『功名が辻』では、輿入れ直前のお市と山内一豊の妻千代が馬駆けするという展開になったのですが、『豊臣兄弟!』では、「弟猿」に長政宛ての文を書いてほしいというお願いでした。

I:この場面ですが、なぜ秀吉が小一郎を遣わしたかというと、上洛したらまたしばらく寧々(演・浜辺美波)と一緒にいられないから、いまは一緒にいたいという「胸キュン」な台詞が飛び出ました。しかも、秀吉が膝枕! これまで、「信長と濃姫」夫婦も加えて逆の「膝枕」パターンは幾度もあったのですが、今回の膝枕のシーンは「なんか、いいな」という場面だったように思います。しかも、いまにも「口吸い」になりそうな、最接近。大河ドラマギリギリの最接近でしょうか。しかもそこに、なか(演・坂井真紀)がやってくるというコント仕立てになりました(笑)。

A:まさに「令和の太閤記!」という感じでしたね。ちなみに1996年の『秀吉』でもお市の輿入れの回で、秀吉(演・竹中直人)とおね(演・沢口靖子)の膝枕シーンがありました。こういうシーンは癒されますよね。

I:私は直(演・白石聖)と小一郎の膝枕シーンが見たかった!

A:ところで、大河ドラマでは同じエピソードが何度もドラマ化されますが、お市の婚礼の場面ひとつとっても、過去作品で同じような「絵」がひとつもありません。「過去作と同じ絵になってはいけない」という「掟」でもあるかのようです。

I:さて、お市が小一郎に語った「私の初陣」という言葉が、胸に響いてきます。兄信長のためになりたいと願うお市の思いと決意。この後、浅井長政との間に3人の娘が生まれます。「浅井三姉妹」――。歴史に刻まれる「三姉妹」はどのように描かれるのでしょうか。

A:山口馬木也さん演じる柴田勝家も婚礼の席に参列していました。柴田勝家がお市の婚礼に参列するというのは、過去作でも記憶にありません。『秀吉』では甲冑姿で小谷まで随行はしていますが……。今回の参列は意味深ですよね。

I:一見、コミカル含みで展開している『豊臣兄弟!』ですが、締めるべきところはしっかり締めている印象です。お市の方の今後の動向も目が離せませんね。

秀吉(演・池松壮亮)に膝枕してもらう寧々(演・浜辺美波)。(C)NHK

※宮崎あおいの「崎」は正しくは「たつさき」。

●編集者A:書籍編集者。かつて『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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