周囲からの「似合わない」の声を押し切って選んだのは、三菱のFTO
失恋と廃車という二重の失意に見舞われた鳴海さん。これらから立ち直るため、次のクルマの購入を考えます。
「次はトヨタの『スープラ(北米仕様から通算で3代目)』を考えたんだ。(プレリュードと)同じリトラクタブルヘッドライトだしね。けれど友人たちが口をそろえたように「似合わないからやめておけ」と言うから、踏ん切りがつけられなくて……。それで中古車店相談したら、次のモデル(3代目)のプレリュードを勧められたんだ。程度もいいし、プレリュードには好感を持っていたから、すぐに購入を決めたよ」
先代プレリュード以上に、新しいプレリュード(形式“BA5”)はエンジンが気持ちよく回り、すぐに鳴海さんのお気に入りとなります。
またこの頃、オートバイに乗る友人が楽しそうに見えたため、鳴海さんもホンダの『VT250F』を購入。気の置けない友人と一緒にツーリングやキャンプに出かけ、オートバイのある生活を楽しみます。しかし町なかでの取り回しや使い勝手に不便を感じるようになったため、運転する機会が徐々に減少。自身もオートバイ仲間も多忙となり、ツーリングに行く機会が無くなったため、購入から3年ほどで売却します。
プレリュードに乗りはじめてから程なくして、鳴海さんはライティングプロダクション会社を退社。再びフリーランスとして活動を行います。
これまでプレリュードに故障といったトラブルはほとんど起こらなかったのですが、ある時期から不思議ともらい事故に見舞われるようになります。
「最初は交差点で停車していたら、後ろからタクシーが追突されたこと。もちろん俺に非はなく修理代金も全額支払われたから、それはそれでいいんだけど……。修理から帰ってきた直後、今度は前に止まっていたトラックがいきなりバックしてきてフロントが潰されたんだ。他にも修理する都度、大なり小なりのもらい事故が起こってね。プレリュードはいいクルマだし、まだ乗り続けるつもりだった。けれど巡り合わせというか、相性の悪い時期に入った気がしてね……。ちょうどクルマを探していた後輩がいたから、安く譲ることにしたよ」
もちろん後輩にはちゃんと事情を説明し、事態を納得した上で購入を決めてもらいました。ちなみに後輩は1年ほどプレリュードに乗り、その間、もらい事故は起きなかったそうです。
相性の悪くなったプレリュードを手放す以前から、鳴海さんには気になっていたクルマがありました。三菱のスポーツクーペ『FTO』です。
「FTOは好みのスタイルをしていたし、鮮やかなボディカラー(パッションレッド)も良い。スープラの時と同じように、回りからは『似合わない』って言われたけど、もうこの頃は『自分の乗りたい車に乗る』って吹っ切れていたから、思い切って買っちゃったよ」
気になっていた狭い室内も、購入後は「まるで戦闘機のコクピットのような格好良さ」と、とらえるようになります。V6エンジンの厚いトルクや乾いた排気音等、乗れば乗るほど深い懐を見せるFTOをすっかり気に入り、この後10年ほどステアリングを握り続けます。
【後編】へ続きます!
取材・文/糸井賢一(いといけんいち)
ゲーム雑誌の編集者からライターに転向し、自動車やゴルフ、自然科学等、多岐に渡るジャンルで活動する。またティーン向けノベルや児童書の執筆も手がける。