一つ一つの単語の意味はわかっているのに、文章になると、どこか違う。そんな表現は、日本語にもありますね。
映画やドラマの翻訳を見ていて、「意味は通じるけど、なにか少しだけズレてる?」と感じたことはないでしょうか? 間違いではないけれど、ぴたっとこない。今日は、そんな小さな「ズレ」を感じる人が多いかもしれない英語表現を取り上げてみたいと思います。
さて、今回ご紹介するのは “I’m proud of you.”です。

“I’m proud of you.”の意味は?
“I’m proud of you.” は、直訳すると「私はあなたを誇りに思う」ですが、実際にはもっと広い意味で使われています。
ニュアンスは、
「あなたの努力を見ていたよ、よくやったね」
「成長がうれしいよ」
「よく頑張ったね」
などになります。
『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)には、“proud” について「1 (…を)誇りに[光栄と]思う,自慢にする,満足に思う((of …,that 節));(…できることが)うれしい,喜ばしい((to do))」と書かれています。
先生から生徒、親から子、上司から部下などという関係だけでなく、友人やパートナー、同僚のあいだでも自然に使われます。そこには必ずしも上下の感覚だけではありません。
“proud” は、相手を上から評価するというよりも、その人の努力やがんばりを自分のことのようにうれしく思う気持ちに近いです。

日本語の「誇り」
一方で、日本語の「誇り」という言葉には、自尊心や名誉、大切に守ってきたものへの敬意といった、少し凛とした響きがあります。
どこか格式や重みを感じさせる言葉のよう。だから、「あなたを誇りに思う」と言うと、相手を高く評価しているというニュアンスがあって、場面によっては少し硬く聞こえたり、距離を感じさせたりすることがあるのでしょう。
それに対して、英語の “proud of you” には、その人自身の努力や歩みに寄り添って、共に喜ぶ気持ちが前に出ているように感じます。同じ「誇り」でも、そこに込められる意味合いに、微妙な文化の違いがあるのかもしれません。
相手の成長を讃える英語表現
では、相手の成長や努力を喜ぶとき、英語ではどのように伝えるのでしょう。今回は、日常会話でよく耳にする3つの表現をご紹介します。
1. “I’m happy for you.”
とてもよく使われる言い方です。相手の成功や幸せを、「うれしいよ」と自分のことのように喜ぶ気持ちがこもっています。肩の力が抜けた、あたたかい祝福のフレーズです。
2. “You should be proud of yourself.”
こちらもよく使われます。「自分で自分を誇っていいんだよ」という、後押しの言葉です。
“I’m proud of you.” が、「他の人から認められる」表現だとすれば、“You should be proud of yourself.” は、「努力してきた自分を、自分でほめてあげてね」という思いが込められています。
3. “I’m really impressed.”
こちらは、相手の成長や努力の場面だけでなく、「感動した」「心が動かされた」と言う意味の、いろんな状況で使える表現です。“impresssed” には、“proud” よりも、少し客観的な響きがあります。相手の努力や成果を認め、感動していることを伝えるときに、ぜひ使ってみてください。

最後に
イギリスの作家 J・R・R・トールキン による長編小説『指輪物語』は、エルフや人間たちがそれぞれの国を築き、戦いと希望の物語を描く、壮大なファンタジーです。
この物語を原作とした映画『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』に、印象的なラストシーンがあります。
世界を救ったのは、大きな英雄ではなく、小さなホビットたちでした。その彼らに向かって、王となったアルゴルンが語ります。
“My friends, you bow to no one.”
(翻訳:池上カノ)
(友よ、あなたたちは誰にもひざまずく必要はない。)
そして次の瞬間、王であるアラゴルン自身が、彼らの前にひざまずきます。
相手の勇気や努力に、純粋に敬意と祝福を送る。相手の喜びを、自分のことのように、ともに喜ぶこと。そんな気持ちが、大切な人との関係をあたたかなものにしてくれるのかもしれません。
次回もお楽しみに!
●執筆/池上カノ

日々の暮らしやアートなどをトピックとして取り上げ、 対話やコンテンツに重点をおく英語学習を提案。『英語教室』主宰。 その他、他言語を通して、それぞれが自分と出会っていく楽しさや喜びを体感できるワークショップやイベントを多数企画。
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●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com











