文/鈴木拓也
「『健康マニア』と呼ばれるような健康情報に精通している人ほど、実は本当に健康な体を手に入れにくい」というのは、自治医大附属病院の招聘鍼灸師を務めるこの道26年のベテラン、中野朋儀さん。これまで約5万人の患者を診てきて確信したそうだ。
世の中には様々な健康法があり、どれも多かれ少なかれ効果はある。それなのに、「健康マニア」の人たちの多くが、健康とは言えないのは、「効果が出るまで継続することがほとんどない」せいだと、中野さんはみている。
中野さんが、患者から聞いた“続けられない理由”で一番多いのが「忙しいから」だそうで、その次に「疲れているから」と「お金がないから」となる。
そこで中野さんが、近著『仙骨を温めればすべて解決する』(SBクリエイティブ)で提唱しているのが、時間もお金もかからず、様々な不定愁訴や病気に効果があるという「仙骨」を温めること。多くの実践者がその効果を立証しているという。
仙骨とは、背骨最下部(腰椎)の直下、お尻の出っ張りのすぐ上にある手のひら大の骨。これは、骨盤の中央にあって、腹大動脈から枝分かれした多数の血管がそばを通り、最も長く太い神経である坐骨神経が走っている。さらに「八髎穴」(はちりょうけつ)といって、8つの重要な経穴つまりツボがある。
要するに、仙骨は骨格、血流、ツボの3点において重要な箇所であり、ここにトラブルが生じると様々な病気につながり、逆に癒すと症状も改善されると、中野さんは説く。そのためには、仙骨の部分を温めるのが良いという。そうすれば、血液・ホルモンの流れが良くなり、神経の働きが整えられ、ツボも適度に刺激されて、身体の調子が良くなるという。
さて、具体的にどうすればよいのだろうか? 中野さんが薦める方法を、本書からちょっとだけご紹介しよう。
■1:熱めのシャワーを当てる
まずは、熱めのシャワーを、仙骨のあるお尻の少し上に30秒間当てるという方法。水温は40度以上とし、10センチほど離した距離から当てるよう、中野さんはアドバイスする。理想は1度の入浴時に3セット行うことだそうだが、習慣化するまでは1セットでかまわないとのこと。
ちなみに「お風呂に浸かって温めれば同じ」ではないという。シャワーでピンポイントに温めるのが、血流を促し、副交感神経の機能を高めるのだそうだ。
■2:温熱シートで温める
中野さんがすすめるもう1つの方法が、40度程度の熱さの温熱シートを、仙骨の箇所に長時間貼るというもの。勤務中でもできるという利点があり、疲れや肩こりには速効的に効くという。
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本書ではこれ以外にも、へそまわりのツボを温めてさらなる効果を生む方法や、体を温める食べ物など、「温める」をキーワードにした幾つかの手法が紹介されている。いずれもすぐに実行できて、長く続けられるものばかり。
すべて解決する、というのはやや勇み足な感あるが、これまで健康法をいろいろ試して続かなかった方は、試しにトライしてみてはどうだろうか?
【今日の健康に良い1冊】
『仙骨を温めればすべて解決する』
(中野朋儀著、本体1,300円+税、SBクリエイティブ)
http://www.sbcr.jp/products/4797391879.htm
文/鈴木拓也
2016年に札幌の翻訳会社役員を退任後、函館へ移住しフリーライター兼翻訳者となる。江戸時代の随筆と現代ミステリ小説をこよなく愛する、健康オタクにして旅好き。
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