取材・文/池田充枝

色絵(いろえ)は、古九谷・柿右衛門・鍋島といった磁器や、野々村仁清・尾形乾山などによる京焼に代表される、江戸時代に花開いたカラフルなやきものです。

「色絵梅樹文水注」〔柿右衛門 江戸時代前期 出光美術館蔵〕

将軍家や御三家への贈物として、佐賀・鍋島藩で作られた特別なうつわ《鍋島》には、日本人の繊細な季節感が宿ります。一方、小袖意匠をアレンジした《古九谷》には、流行に敏感で、時に大胆なデザインを生活に取り入れる、斬新なファッション性がみられます。

仁清や乾山の《京焼》を飾る和歌・能の意匠は、豊かな文学の伝統を、遊戯性あふれる表現に仕立てたもの。そして世界の王侯貴族を魅了した《柿右衛門》と《古伊万里》は、カラフルで楽しい日本デザインに、国境を越える普遍的な魅力があることを物語っています。

このような愛らしくも絢爛な「色絵」のやきものの世界を紹介する展覧会《色絵 Japan CUTE!》 、東京の出光美術館で開かれています。(~2018年3月25日まで)

本展は、「季節を祝う、慶びを贈る」「ファッションと文学」「Japan CUTE、世界を駆ける」「かたち・色 百花繚乱」「色彩茶会(カラフル・ティーパーティ)」の5章に分けて、約180点の作品を展観し、色絵をより広く、カラフルな色彩を楽しむやきものとして紹介します。

「色絵松竹梅文大皿」〔鍋島藩窯 江戸時代中期 出光美術館蔵〕

本展の見どころを、出光美術館の学芸員、柏木麻里さんにうかがいました。

「色絵には、日本の魅力がぎゅっと詰まっています。その一つが、旧暦の繊細な季節感。のどかな春の川面に、桜の花を乗せた筏がゆらりゆらりと漂う《色絵花筏文皿(いろえはないかだもんさら)》の花筏は、3月3日に行われる曲水の宴(きょくすいのえん)にちなんだデザインです。今も京菓子の世界では、花筏は雛祭のお菓子として愛されています。

尾形乾山「色絵龍田川文透彫反鉢」〔江戸時代中期 出光美術館蔵〕

季節をうたう和歌も、色絵のデザイン・ソースになりました。尾形乾山の《色絵龍田川文透彫反鉢(いろえたつたがわもんすかしぼりそりばち)》は、和歌に詠まれた紅葉の名所、龍田川を、あでやかな紅葉と川の流れごと、そっとうつわに掬い上げたかのような懐石の食器です。

野々村仁清「色絵梅花文四方香炉」〔江戸時代前期 出光美術館蔵〕

愛くるしい形をかたどるのも、色絵の得意技。野々村仁清の《色絵梅花文四方香炉(いろえばいかもんよほうこうろ)》には、象の姿をした両耳がつき、蓋の上にはなんと、白うさぎがちょこんと乗っています。

愛らしさ満載の色絵はさらに、海をも越えてゆきました。柿右衛門の《色絵梅樹文水注(いろえばいじゅもんすいちゅう)》は、ヨーロッパの貴族に紅茶のポットとして愛用されたもの。春に向かうこの季節、ぜひ、皆様をお待ちしている可愛らしい色絵、絢爛と楽しいうつわの数々に出会いにきてください」

陶磁器を、男性目線の堅苦しいものではなく、女性目線の優しいものとしてとらえた楽しい展覧会です。気軽に足をお運びください。

【展覧会情報】
《色絵 Japan CUTE !》
会期:2018年1月12日(金)~3月25日(日)
会場:出光美術館
住所:東京都千代田区丸の内3-1-1帝劇ビル9階(出光専用エレベーター利用)
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時から17時まで、金曜日は19時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし2月12日は開館)
http://idemitsu-museum.or.jp/

取材・文/池田充枝

 

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