いくつになっても母親と娘の関係を崩すことができない
東京で仕事を先に決め、母親から反対されない状況を先に作るという計画は無事成功。しかし、二人暮らしは新居まで立ち入った母親の影響でかなわなかったそう。
「例えるなら、大学進学で一人暮らしを始める娘というより、高校から親元を離れて寮に入る子どもに対する親といったところでしょうか。女性限定マンションや、地域さえも指定されました。親には彼とは別れたことにしていたので、女性限定マンションを断れるわけもなく……。
一人暮らしを始めてからは、母親から毎日連絡がありました。でも、彼以外に知り合いのいない東京に、慣れない仕事で寂しかったから、それも嫌じゃなくて。それに彼は仕事がより忙しくなって、まったく構ってもらえなくなり、上京して半年ほどで別れることになったんですよ……。彼と別れたことに後悔はないけど、見切り発車で上京してしまったことに対してはとても後悔しましたね。仕事があったから踏ん張ることができたんですけど」
そこから定期的に帰省はするものの、徐々に電話の回数も減り、東京ー大阪という物理的な距離もあって、母親とはお互いいい距離感で付き合えるように。しかし、このコロナ禍の影響で関係はより密になり、それによって見えたこともあったようです。
「今は前みたいに毎日連絡を取り合っています。父親が今はコロナの影響で仕事を休んでいるみたいで、2人きりの空間が耐えられないみたいですね。
毎日の会話の中で美容院の話題になり、今は行けないね~という会話の中で、母親が私に対して『信子ちゃんはないからいいけど、お母さんは白髪染めをしないといけないから』と言いました。私、もう40歳なんです。白髪なんて当たり前のように生えているし、年齢的にも当然のこと。でも、それをわかっていない母親と、『当然ある』と言えない私がまだいたんです」
最後にもう1つわかったことがあると、信子さんは言います。
「今まで何人かの男性と付き合いましたが、結婚には至りませんでした。別れは自ら選択したものもあるから後悔はありません。でも、男性と添い遂げることがいくつになっても、『今』じゃなく『いつか』とまだ思ってしまうんです。そう考えると、私の中でもまだ娘という部分から卒業できていないんだなって痛感してしまいます」
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。