取材・文/ふじのあやこ
家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。~その1~はコチラ
今回お話を伺ったのは、兵庫県で3歳になる男の子の母親である専業主婦の朱音さん(仮名・42歳)。兵庫県出身で、両親と8歳下に弟のいる4人家族。母親は弟ができてからは弟に付きっきりになり、父親は中学に上がる前に単身赴任で離れて暮らすことになります。高校からは友人関係がうまくいかずに学校でも、家でも1人ぼっち。そんな愚痴をいつも父親は聞いてくれていました。短大でもうまく友人を作れず、卒業後は大阪の企業に就職、そのまま大阪で一人暮らしを継続します。
「実家には帰る理由がありませんから。両親ともに実家に戻って来いなんて言われなかったし。
就職した会社には同じ部署に10歳以上年上の女性と、8歳上の女性と上司の男性がいました。そこでも女同士のいがみ合いがすごかったんです。ここでもかとうんざりしました。女性って、自分の味方にしようという仲間意識が強いんですよね。2人ともが私に相手の文句を言ってきて、同調を求めるんです。でもそれも数か月で終わりました。私がずっと曖昧な態度を取っていたら相手にされなくなって。ただ坦々と仕事だけをこなす毎日でした」
仕事を坦々と続ける中、15歳上の既婚者と出会い
仕事内容は伝票の処理や、リスト作り、発注、輸入のスケジュール管理など外部とのやり取りのない仕事がほとんどだったそう。しかしそれが自分には向いていたと朱音さんは言います。
「人とコミュニケーションを取るのが苦手だと学生時代に学習していたので。営業の方へは先輩方がやりとりしてくれていましたし、私は2人のアシスタントとしてパソコンにひたすら数字や文字を入力するだけです。でも、意外と楽しかったんですよね。私は作業が早かったみたいで、仕事ができれば認められますから」
仕事中の私語は一切なかった朱音さんですが、あるきっかけでその生活が一変します。
「ずっとメールと電話だけのやりとりをしていた外部の営業の方に食事に誘われたんです。私もその人の低い優しそうな声に興味があったので軽い気持ちでOKしました。
第一印象はおじさんでした。だって、15歳も上で、既婚者でしたし。でも最初に会ったのは喫茶店で、やらしさとかもなく、お話ししただけで帰りました。でも、そこからメールにもプライベートな内容をお互いが入れるようになって。会社のメールから携帯のメールに連絡が代わり、いつからか好きになってしまっていました」
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