「安全な車」を選ぶ
安全運転のために、できれば「安全な車」を選びたいものです。近年、安全装備はかなりの進化をとげましたが、メーカーや車種によって性能に差があります。実際の安全性能を知るためには、国の機関が行なう安全性能評価(アセスメント)が参考になります。
安全性能評価は「NCAP」(エヌキャップ/ニュー・カー・アセスメント・プログラム)と呼ばれ、全世界で行なわれています。日本では「JNCAP」と呼ばれ、独立行政法人自動車事故対策機構が市販の新車を購入し、予防安全性能、衝突安全性能、事故自動通報システムについて実車走行テストを行ない、結果を公表しています。
最近とくに注目されているのが予防安全性能評価です。試験項目には、2021年11月以降、新車への搭載が義務となる「被害軽減ブレーキ」(新聞紙上では「自動ブレーキ」とも表記)のほか、「車線逸脱抑制装置」「後方視界情報提供装置」「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」などがあります。
たとえば、街灯がある夜間の道路を横断中の歩行者(人形)に、時速30~60kmで試験車を接近させる。被害軽減ブレーキが作動し、歩行者を轢かずに停止できるかどうか。そうした実地テストが行なわれ、その動画はJNCAPの公式サイト(※1)で見られます。
ただ、JNCAPではすべての市販車をテストしているわけではありません。試験対象は国内での販売台数の多い車種から順に選定されるため、輸入車はほとんどテストされていないのです。
欧州車の評価については「Euro NCAP」の公式サイト(※2)が参考になります。「被害軽減ブレーキ」の試験に対自転車の項目まであるなど日本とやや異なりますが、欧州での日本車の評価もわかって興味深いサイトなので、ぜひ一度ご覧ください。
正しい車間距離は「2秒」
さて、せっかく安全な車を選んでも、運転するのは私たち人間です。ここでは安全運転のためのコツをふたつ提案したいと思います。
まずは車間距離。「正しい車間距離は2秒」と覚えてください。たとえば標識などの目標物を設定し、そこを先行車が通過したときに「0、1、2」と数えます。2のときに自分がその標識を通過するようなら、適切な車間距離です。
この方法は、世界基準となりつつある車間距離確認法です。どんな速度でも2秒を守ることで、先行車のアクシデントなどに対処できる車間距離となります。この車間距離を心がければ、近年取り締まりが厳しくなった“あおり運転”と誤解されずに済みます。
そしてもうひとつが、ドライビングポジション(運転姿勢)。長年運転しているドライバーでも意外と無理な姿勢で運転していることが多いのです。姿勢に無理があると、視界が狭くなりますし、疲労もたまります。ぜひ今一度、正しい運転姿勢を確認してください。
※1:JNCAP http://www.nasva.go.jp/mamoru
※2:Euro NCAP(英語表記) http://www.euroncap.com
写真・画像提供/独立行政法人 自動車事故対策機構
「正しい姿勢」で運転を
これが正しい運転姿勢
8つのチェックポイント
菰田 潔さん(自動車評論家・69歳)
安全運転普及の第一人者。テストドライバーを経て現在は日本自動車ジャーナリスト協会会長。BMW公認運転スクールの主任教官を務める。著書に『クルマの運転術』。
※この記事は『サライ』本誌2020年3月号より転載しました。