本当に必要としてくれるのは親ではなく子供だった

数十社の面接を繰り返し、やっと引っかかったITのメディア事業やコンサル事業を行う会社に採用されます。そこで良美さんは仕事で認められたい一心で上司の言う通りに取り組み、残業も率先して行っていたとか。しかし、体調不良による休職をする羽目になります。

「誰かの役に立ちたい、必要とされたいという気持ちを持ってしまうんです。採用されたのであれば、役に立って、この人を採用してよかったと思ってもらいたいと。しかし、毎日数時間の睡眠を3年ほど過ごしてきた時、摂食障害になってしまって……。吐き癖がついて、いつも喉から血が出ていました。痩せてしまったせいなのか、貧血なども併発してしまい、満員電車に乗れなくなってしまったんです。そして仕事を休職することになりました。家族だけではなく、職場の人からもお荷物だと思われるんじゃないかと、休んでいる間に戻るのが怖くなってしまって、そのまま退職しました」

就職後は実家を離れていた良美さんですが、仕事を辞めたことで実家に戻ることになります。しかし居心地は昔のまま。良美さんは別の場所に居場所を求めていきます。

「実家には家賃を払えなくなって、強制送還になったんです。母親はそれから病院にも付き添ってくれましたけど、父親とは口をきくことはありませんでした。私からも避けていたんですけどね。

治療は良くなる期間もあれば、また悪化したりを繰り返しながらも、仕事をできるようにはなったんですが、周りの反対もあってずっと実家にいないといけなくて。そんな時に新しい職場で出会った男性と恋愛関係になり、子供を授かって結婚することになりました」

そして現在、子供は4歳。母親の手助けもあり、子育てに励んでいるそう。実家に身を寄せている理由を聞くと、「一度籍は入れて一緒に暮らし始めたんですが、出産直後ぐらいに離婚しました。夫の気持ちが離れていくのがわかったんですが、この子がいたから、私も夫に固執する理由もなくて。実は今両親は別居していて、父親が実家を出ていきました。母親とは我が子という共通点があるので、今までで一番うまくいっています。母親もきっと一人になりたくないんじゃないかな。大変なことも多いけど、子供といる時間が今までの人生の中で一番幸せです」と笑顔で語ります。

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

1 2

 

関連記事

ランキング

サライ最新号
2024年
12月号

サライ最新号

人気のキーワード

新着記事

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

サライ公式SNSで最新情報を配信中!

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE

「特製サライのおせち三段重」予約開始!

小学館百貨店Online Store

通販別冊
通販別冊

心に響き長く愛せるモノだけを厳選した通販メディア

花人日和(かじんびより)

和田秀樹 最新刊

75歳からの生き方ノート

おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店
おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店