取材・文/ふじのあやこ
家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。(~その1~はコチラ)
今回お話を伺ったのは、埼玉県にある実家に身を寄せながら、在宅でオペレーターの仕事をしている良美さん(仮名・38歳)。埼玉県出身で、両親と4歳上に兄のいる4人家族。躾に口うるさい母親、そして勉強に厳しい父親の下で、成績優秀な兄と比べられ続けた学生時代を過ごします。
「家は裕福だったのか、家族旅行にも大型連休の度に連れて行ってくれたし、習い事も5つも掛け持ちしている状態でした。でも、何をしても兄に勝てないし、旅行では父親に感想文を提出しないといけない義務があって、心から楽しいものではなかった。父の期待に応えられなかった私は、高校進学を機に何も言われなくなりました」
有名大学進学も父親は振り向いてくれなかった
高校を卒業後は都内の有名大学へ進学。親に認められたい一心で良美さんは受験勉強を頑張ったと言います。しかし、父親からの評価は上がることはなかったそう。
「おかしい話ですよね。小さい頃はボロクソに『子育てを失敗した』とまで言われた私が、無視されていることのほうが辛いなんて。小さい頃は怒られる度に自分のことを誰からも見えなくなればいいのにとさえ思っていたのに。
大学は高校生活を勉強に費やしたというくらい頑張って、兄と同レベルのところに受かったんです。でも父親からは相変わらず私は見えていないようでした。母親は喜んでくれましたよ。でもどこか気を遣っている感じでした。父親が喜ばない分まで、無理にでも喜ぼうとしていたんじゃないかな」
大学生活中も勉強を疎かにすることはなく評価も高かったものの、次の受難はすぐ、就職活動にやってきます。
「勉強はやったらやっただけわかりやすい評価をしてもらえる。小さい頃なんで不得意だったのかよくわからなくなるくらい、勉強は楽しいというより楽でした。
いい大学で、成績も上々なのに、就職活動ではまったくいい結果は得ることができませんでした。誰からも認められたことがないと、自己評価が低くて、自己PRがまったくうまくいかなくて……。自分を肯定することを誰からも教えてもらっていないから、できないんです。それまで恋愛も勉強を優先してきたせいもあって、異性に選ばれることもなかった。自分のことをいいと思っていない人を、企業が選ぶわけないんですよね」
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