■リハビリが充実している老健を探す
しかし、6か月するとこの病院も出なければならない。医療保険の制度上、集中してリハビリが受けられるのは、6か月が限度だったからだ。父親はまだトイレに一人で行くことができなかったため、介護老人保健施設(老健)に移ることになった。宍戸さんは、このときもより環境の良い老健探しに奔走した。
「都には老健のデータベースがあって、看護師や理学療法士(PT)の数や、患者に対する人数比が出ています。それらを見比べれば、その施設のリハビリ体制の充実度がわかります。そこに自宅からの距離を考え合わせて、いくつか候補をピックアップし、見学に行きました」
宍戸さんは、週末に見学できないか交渉したが、平日しか受け付けていない施設が多く、やむなく仕事を休んで見学をした。
「それでも実際自分の目で確かめると、データベースだけではわからないものが見えてきます。雰囲気はもちろんですが、臭いの有無は施設の良し悪しの大きな判断基準となりました」
宍戸さんは、これらのリサーチを常に先回りして行った。急性期病院に入院中にリハビリ病院を探し、リハビリ病院に入院中には次に移る老健を探す。老健に入ると、また次の老健を探す、というぐあいだ。
「老健は基本的に自宅復帰のための施設なので、長くいるところではありません。それに3か月すると、リハビリの回数が減るということだったので、リハビリを続けるためには次の施設を探さざるを得なかったんです」
【後編に続きます】
取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。