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取材・文/坂口鈴香

「親の終の棲家をどう選ぶ」にこれまで登場してくれた方たちが、施設に不満があっても「親が世話になっているから言えない」「言っても変わらない」と、意見を言うことを最初からあきらめていることに疑問を持った。

両親を有料老人ホームに入れた中村万里江さん(仮名・35)も、入居当日に「この対応はまずいのでは?」と思うできごとが重なったが、「親が入居したその日から、ホームに文句を言うようなことになっていいのか? もう少し様子を見てから言った方がいいのか? 入って早々、“うるさい家族”だと職員に思われたら、両親にとってデメリットになるんじゃないか」と悩んだ。

ホームは“うるさい家族”を嫌がるのか。意見や要望を何も言わない家族と、言う家族なら、どちらが親にとってトクなのだろうか。

ホーム紹介会社勤務の経験もあり、現在は有料老人ホームで生活相談員をする丸田明宏さん(仮名)は、「ホームに対して疑問に思ったことははっきり言うべきだ」と明言する。

【前編はこちら

うるさい家族と思われるかは、言い方ひとつ

中村さんの場合もそうですが、放置されると大ごとになることもあります。ただ職員のうっかりミスの場合もあるので、くれぐれも高圧的にならないように。うるさい家族と思われるかどうかは、言い方ひとつです。

確かに“クレーマー”と言われるようなご家族はいます。どこにでも、無茶なことを言うご家族は必ずいるものです。「要注意リスト」をつくっているホームもあります。

逆に、過度に遠慮されるご家族もいます。こういうご家族に対しても、職員がご家族の不満を感じ取ることができないと、不満はさらに大きくなります。そうならないためには、職員やリーダーの素養が必要なのです。能力が低いと、ご家族の不満は感じ取れません。

いずれにしても、ご家族の意見を真摯に受け止めてくれるかどうかは、ホームの質を判断する目安になります。クレーマーだと思われるんじゃないかと二の足を踏むご家族もいるかもしれませんが、言い方が問題なだけ。意見や要望を伝えるのは、ご家族にとって正当なことです。

最初から100点を目指さない

「言っても仕方ない」「言っても変わらない」と、最初からあきらめている日高さんのようなご家族も少なくないと思います。そんなご家族にアドバイスしたいのは、最初から100点を目指さないでほしいということです。100点のホームは、まずありません。100点を目指していると、どのホームにいても不満が出てくるでしょう。

では何点を目指すのか? 70点から80点が妥当です。そこに届かないようなホームなら、別のホームに移ることも考えた方がいいと思います。

とにかく、最初から「言っても変わらない」とあきらめず、「変わったらもうけもの」くらいの気持ちで言ってほしい。「うるさい」ととらえるホームもないとは言えませんが、「良い意見をいただいた」と思って、改善してくれるかもしれません。

それから、日高さんや井波さんの話に出てくる「いじわるなスタッフ」「ひどい対応をするスタッフ」ですが、これはほかの入居者やご家族も同じことを感じているのは間違いないです。だからこそ、声をあげてほしいのです。共感の声はあるはずなので、そうした声が大きくなれば、ホーム側もその職員の異動を考えたり、教育的指導をしたりするでしょう。

異動すると自分の親はよくても、今度は異動した先の入居者が困るのではないかと思われるかもしれませんが、そこまでになると、そうした問題のあるスタッフは辞めることが多いです。

度を越さない限りは、うるさい家族の方がトク

意見を伝えるタイミングですが、「これはおかしいのでは」と思うことが積み重なって、まとめて言うのではなく、気づいたときにその都度言っておいた方がいいと思います、

言うことで、親が不利な扱いをされることはありません。というより、あってはいけないのです。制度として、不利な扱いは禁止されています。ホームと契約するときに渡される重要事項説明書にも書いてあるはずですので、読んでみてください。

では、何も言わないご家族より、物言うご家族の方が、職員が丁寧に対応するから、トクだと言えるのか? これについては、“クレーマー”といわれるほど度を越すことがなければですが、“うるさい家族”がいると職員に周知されれば、それなりに気配りはしてもらえるでしょう。

しかし、何も言わないご家族だからと、放っておかれるというのは別問題です。それはダメなホームの典型。ホームの介護の質が問われることになります。

* * *

今回は“うるさい家族”はトクなのか、考えてみた。結論としては、常識的な範囲内なら「うるさい家族はトク」と言えそうだ。

ポイントは
1 落ち着いて、高圧的にならず
2 リーダー以上の職員か施設長に
3 気がついたことがあればその都度
意見や要望を伝えること。

最初からあきらめることなく、それでも100点は目指さず、改善してくれればもうけものくらいの気持ちで要望を伝えてみてはどうだろうか。その一言が、ほかの入居者や家族のためにもなるかもしれないのだから。

取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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