取材・文/坂口鈴香
「親の終の棲家をどう選ぶ?|「一刻も早く私から引き離そうという意図が見えた」母親への虐待を疑われた息子(https://serai.jp/living/1073877)」
では沢村寛之さん(仮名・60)が、ケアマネジャーと地域包括支援センターに対して強い不満を口にした。
この連載でもたびたびケアマネジャーや地域包括支援センターについて触れてきたが、改めて解説したい。前編では地域包括支援センターについてお話ししたので、後編ではケアマネジャーについて解説していく。
【前編はこちら】
ケアマネジャーとは
略して「ケアマネ」と呼ばれるケアマネジャーの正式名称は「介護支援専門員」。介護が必要になり介護サービスを利用しながら暮らそうとしたとき、最初に決めなくてはならないのがこのケアマネジャーだ。ケアマネジャーには以下のような役割がある。
1.ケアプラン(介護サービス計画)をつくる
要介護度によって利用できる介護サービスの回数や時間が違う。訪問介護、訪問看護、訪問入浴、訪問リハビリテーション、通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)などの介護サービスを、介護を受ける本人や家族の心身の状況、希望に合わせて組み立てる。身体状態によっては、介護ベッドや歩行器、車いすなどの福祉用具を導入したり、住宅改修をして手すりやスロープなどの設置指示を行うこともある。
2.介護チームの司令塔となり介護生活をマネジメントする
ケアマネジャーは介護サービスやサービスを提供する事業所をアレンジし、ヘルパーや看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの専門職による介護チームの“司令塔”としてうまく回す必要がある。
そして、要介護者の家庭を定期的に訪問、モニタリングをしながら、要介護者とその家族の介護生活をマネジメントしてくれる重要な専門職だ。それだけに、どうやって、どんな人を選ぶかが大事になってくる。
ケアマネジャーは替えられる
「親の終の棲家をどう選ぶ?|「一刻も早く私から引き離そうという意図が見えた」母親への虐待を疑われた息子(https://serai.jp/living/1073877)」で、沢村寛之さん(仮名・60)の母親は地域包括支援センターから紹介されたケアマネジャーが担当となった。利用者がケアマネジャーを選ぶのではなく、ケアマネジャーが指定されるという地域も少なくない。たくさんの事業所から自分や親に合ったケアマネジャーをどうやって選べばいいかわからないという声もよく聞くので、指定されたほうがスムーズといえる面があるのも事実だ。
指定されるにしても自分で選ぶにしても、合わなかったり信頼できないと思ったりした場合、ケアマネジャーを替えることも可能だ。2人目となると、利用する側もある程度の知識があるので、複数の候補者の中から適任と思える人を選ぶこともできるだろう。
「親の終の棲家をどう選ぶ?|認知症になった母――遠距離介護がはじまった(https://serai.jp/living/383635)」で登場した上野明美さん(仮名・59)もその一人だ。3人目となるケアマネジャーを選ぶ際、複数の候補から上野さんが直接面談して決めた。この過程でそれまでのケアマネジャーの問題も見えてきたといい、「3回目にしてようやく満足のいく人に出会えた」と喜んでいた。
なお注意してほしいのが、要支援と要介護とでは介護サービス提供の仕組みが変わるため、要支援から要介護になると、ケアマネジャーも変更されるということだ。前編の地域包括支援センターの役割で解説したように、要支援の人は地域包括支援センターがケアプランを立てるので、ケアマネジャーも地域包括支援センターの職員が担当となる。要介護の人は基本的に居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャーがケアプランを立てることになる。
取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。