取材・文/坂口鈴香

親の終の棲家をどう選ぶ?|ここが親孝行のしどきだと思った――宍戸千絵さんの場合【後編】

先の参院選に立候補した宍戸千絵さん(41)は、両親の介護経験がある。母親が患ったがんは、膵内分泌腺がんという希少がんで、余命は2年と告げられた。それから間もなく、元気だった父親が脳出血で倒れる。重篤な状態で、6か月のリハビリ後も自宅に戻ることができず、介護老人保健施設(老健)に入ることになった。リハビリの回数が減るのを避けるために、宍戸さんは3か月ごとに次に移る老健探しに奔走した。

前編はこちら】

■父の誕生日に亡くなった母

父親が何か所目かの老健に入所中、母親が亡くなった。最期は自宅で見送ったという。

「入院していても、もう状態は変わらないと言われていましたし、母も自宅に戻りたがっていたので、自宅に戻すことにしました。このときは、兄嫁が仕事を辞めて母をみてくれました。私は近くに住んでいたので、少しでも母の口に入りそうなものがあれば持っていきました。また海外出張の多い仕事だったのですが、出張はやめさせてもらい、有給と介護休暇を使いながら母の看護をしました」

ひとつだけ、心残りがあるという。それは、母親の希少がんに合う薬がアメリカにしかなく、非常に高額だったために、わずかしか使えなかったことだ。

「祖父が、老後のためにと準備していたお金を母のために使ってくれと渡してくれましたが、1回100万円単位の薬なので、そう何度も使うことはできませんでした。お金がもっとあったら、状態が少しでも改善したのかもしれないと思います」

母親が亡くなったのは、父親の誕生日だった。父親は、妻の死を理解していたようで、しばらく精神的に不安定になった。介護タクシーを使って、葬儀に参列してもらおうとしたが、着替えるのを嫌がったという。

「母も残される父のことが心配だったのでしょう。最期に『お父さんのことを、みんなで見てあげて』と言っていましたし、遺言にもそう書いてありました」

【次ページに続きます】

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