取材・文/ふじのあやこ
家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。~その1~はコチラ
今回お話を伺ったのは、都内の病院で歯科医として働いている沙織さん(仮名・38歳)。神奈川県の横浜市出身で、両親と2歳上に兄のいる4人家族。小学校の時から医療系に進みたいと思っていた沙織さんは中学受験で入った学校で成績が上昇。そのことで勉強が好きになっていきます。そして高校の時、親族の入院が歯科医を目指すきっかけになります。
「親戚のおじさんが虫歯を悪化させて大学病院の口腔外科に入院したんです。それに当時祖父の入れ歯の調子が悪くなり、毎日歯茎から出血するなど、歯のことを考えることが多くなりました。単純なんですが、何とかしたいなって思ったんです。でも当時はまだ医療系の候補の中に歯科医も入っただけでした。歯科医1本で受験を決めたのは高校2年生の夏ごろ。そこから毎日勉強するようになりました」
ストレートで歯科大学に合格。親をいい意味で裏切った
歯科大学を目指すことを決めた時、沙織さんの心の中にはお金の心配があったそう。しかし両親はすごくあっけらかんとしていたと言います。
「きっと受かると思ってなかったんですよね(苦笑)。まぁ私も一浪は覚悟していました。それに私は昔から目標をみんなに言う癖があって、スペースシャトルが上がったら『NASAに入りたい』と言ったり、医療系も最初はドラマがきっかけで外科医を目指すなど大きなことをよく言っていたんです。だから、また言っていると本気に受け止めてもらえなくて。それが少し悔しかったので、これ見よがしに毎日勉強して、本気度をアピールし続けました」
そして沙織さんは見事にストレートで歯科大に合格。2次の補欠合格だったこともあり、入学までは家族でバタバタだったそう。
「1次試験に落ちて、3月に行われた2次試験で受かったんです。合格発表は母親と見に行ったんですが、2人して補欠合格の番号を見落としていて……。その日は落ちたと思って帰ってしまい、後日学校からの連絡で気づきました。でも、医学部は最初に振り込む学費も高かったので、学校からではなく入学金詐欺じゃないかという話になって、高校の学校の先生まで巻き込んで父親と一緒に学校のことを徹底的に調べ始めたんです。その結果、合格は本当で、入学金振り込みの締め切り2日前くらいにやっと入学の手続きが終わった感じでしたね。そこからその学校は1年間全寮制になるので、数日の準備だけで実家を出ることになって、本当に最後までバタバタでした」
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