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文/鈴木拓也

五十肩、腰痛、膝痛などで来院してくる患者に、「あなたは今朝、何を食べましたか?」と、必ず聞く整形外科医がいる。大友外科整形外科(埼玉県)の大友通明院長だ。

通常、整形外科医は患者に対する処置として、手術をするかしないかをまず検討する。手術をしない場合は、痛み止めの薬や注射、牽引療法といった従来からある治療を施す。患者が何を食べているかには、関心は向かわないのがふつうだ。

大友院長は、「ここに現在の整形外科の重要な問題がある」とし、まったく別のアプローチで患者を診る。食事内容をたずね、血液検査から栄養状態を知る。診断に応じて、食事・筋トレ指導やサプリメントの摂取をすすめる。こうした、「治療」によって治った患者が大勢いるという。

大友院長が唱える医療は、「栄養整形医学」。頑固なこりや痛みの陰には「栄養不足」が隠れているとし、不足している栄養素を補ってゆくというのが基本的な考え方。

例えば、膝に関節液がたまって痛みが生じる関節水腫。この症状で藁にもすがる思いで来院した患者に、大友院長はビタミンB群を大量に摂るよう指示。2週間後、何か月もたまっていた関節液がなくなり、数か月で通院不要になるまで回復したという。

こんなケーススタディとともに症状別の栄養対策を概説したのが、著書である『骨と筋肉が若返る食べ方』(青春出版社)だ。

本書を読むと、整形外科的な慢性痛やトラブルが、いかに栄養の不足と関連しているかがよく理解できる。特に重要な栄養素は、たんぱく質、各種ビタミン、鉄。骨粗鬆症のような骨の問題から腰痛まで、様々な病気がこれらほんの数種の栄養分が足りないことで起こるという。

そして意外にも、健康的な食事を心がけているシニア層に、栄養不足からくる症状が多いとも。

実は「体にいい食事」を誤解している方は多いのです。患者さんの食事でよくあるのが、
「肉はなるべく食べないようにして、野菜をたくさん食べています」
「果物はヘルシーだから、毎朝摂っています」
「乳製品はカルシウムが摂れるから、牛乳やヨーグルトを欠かしません」
などです。
しかし、現実には関節痛や肩こり、腰痛など整形外科的な不調を抱えています。
(本書4pより)

具体例として、腰痛持ちの男性が挙げられている。現役時代は外食で肉を食べる機会が多かったが、定年退職後に魚・野菜中心の奥さんの手料理に切り替えたら、「疲れやすくなり、腰に痛みを感じるように」なったという。

血液検査でたんぱく質と鉄の不足が判明し、大友院長が「働いていた頃のように肉を食べたらどうでしょう」とアドバイスしたところ、2週間で腰痛が消えたという。

ちなみに、大友院長がすすめる「肉」は、牛肉、ラム肉、馬肉、ジビエ(イノシシやシカ等)のいわゆる赤肉。たんぱく質はもちろん、鉄分やビタミンB群なども豊富に含まれていることが、理由の一つだ。

逆に栄養過多のせいで不調をもたらすこともあるという。その栄養の筆頭格は糖質。糖質を摂りすぎると、交感神経優位となって血管が収縮し、血流が悪くなる。そして肩こりをもたらすことがあるという。また、「糖化」といって、体内の余剰な糖質がたんぱく質と結びついて、AGEs(糖化最終産物)という厄介な物質を作り出す。これにより、動脈硬化、皮膚のしわ・たるみ、骨の脆弱化などさまざまなトラブルが生じる。大友院長は、「糖質ゼロ」を目指す必要はないが、メリハリをつけ摂取を抑えるよう諭している。

「人生100年時代」といわれるようになったが、人生の後半戦で肩のこりや腰の痛みなどに悩まされているのはもったいない。かかりつけ医の見立ても大事だが、自身の食事に問題アリと思ったなら、本書を参考に改善に取り組んでみてはいかがだろうか。

【今日の健康に良い1冊】
『骨と筋肉が若返る食べ方』

http://www.seishun.co.jp/book/20352/

(大友通明著、本体950円+税、青春出版社)

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。

 

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