文/鈴木拓也
医学博士で井本整体の創始者である井本邦昭さんは、5年前に「かつてないほど激しい首の痛み」に襲われたという。
激痛は昼夜問わず続いたので、大学病院で脳神経外科医をしている息子さんに診てもらったところ「のどを切開し、首の骨などを削る大手術をするしかない」などと言われた。
しかし、整体の予約や講座の予定で多忙をきわめる井本さんに、手術を受けて療養する暇はなく、自力で治すことを決意する。
このとき行ったセルフケアは、後に「引き合う動き」と名付けることになるもので、痛む部位をゆるめることを主眼としたもの。数日の間、空き時間のたびにこれを行ったところ、痛みは完全に消失。現在に至るまで、一度も再発していないという。
息子さんの同僚だった元看護師で、同じ症状で苦しんでいた女性にやり方を教えたところ、やはり数日で痛みが消えた。
これを、様々な症状に適用でき、万人向けにアレンジしたものが、著書『引き合う動きが体を変える』(サンマーク出版)に掲載されているメソッドだ。
■脚を動かすだけで様々な不調が消える
やり方は、4つの手順にしたがい脚を動かすだけという、ごくシンプルなもの。時間もかからず、横になるスペースがあればどこででもできる。
具体的なやり方は、本書をご覧いただくとして、驚きなのはその即効性と有効性だ。
本書には多くの体験者の声がある。例えば、御年82歳の小林さんは、6年ほど前に腰の違和感がひどくなり、そのうち股関節や膝の内側にも異変が生じる。とうとう、歩行時に着地するたびに、鋭い痛みが走るようになった。
それが、「引き合う動き」をやりはじめたところ「わずか1週間から10日程度で、すべての不調が解消」されたという。全快したので「引き合う動き」はやめたが、再発はないとも。
そのほか、「ひどい股関節痛やぎっくり腰、膝痛、足首のゆるみが解消」「四六時中あった鈍い頭痛が1週間ほどで感じないようになり、気になっていた小さな脳梗塞がすべて消えた」など、喜びの声が寄せられている。
また、本書の執筆にあたり、75名に1か月間実践してもらったところ、膝痛、腰痛、股関節痛、坐骨神経痛、肩こり、手足の冷え、眼精疲労、便秘の症状の改善が、約4~6割の人に見られたという。
■膝だけに不調があるから膝痛が生じるわけではない
井本さんによれば、シニアに多い膝痛ひとつとっても、膝だけが不調を生じて痛むわけではないと説く。
この場合、井本さんが注目するのは背中。息を吸うときに動く筋肉が弱ると、正しい姿勢を保つ力まで失われる。すると、背骨の自然なS字カーブも失われ、腰だけで上半身の重みを支えることになる(特に腰椎3番に過剰な負担がかかる)。その影響で股関節が開き、その下に位置する膝が軽く前に出て、膝関節に余分な負担を強いて、最終的に膝痛になる。
これが、「引き合う動き」をすることで、太もも前後の筋肉がゆるんで膝関節への負担が減り、膝関節が適度な隙間を取り戻す。さらに、弱った大腰筋が刺激され、大腰筋が付着している腰椎3番が動きを回復して負担がなくなり、膝痛が解消されるという一連の改善が生じる。
治るメカニズムを説明すると複雑だが、その理屈を知らないでも「引き合う動き」を続けるだけで効果を体感できる。実践1か月で、59.1%の人の膝痛が軽減されたという。
■弱った胃腸が原因で肩こりになることも
これが、国民病といわれる肩こりだと、やはり肩自体に原因があることは少なく、一つの原因として(過食などで)弱った胃腸が神経を通じて胸椎に悪影響を及ぼし、背中の筋肉が硬直。結果として、肩・首の筋肉が引っ張られて肩こりになることが多いという。
これも、「引き合う動き」というただ1種のメソッドによって改善される。この場合、胸椎12番がよく動くようになって、広背筋など背中の筋肉が刺激され硬直がゆるむ。そして、胃につながる神経が出ている胸椎6~8番も動きを取り戻して、胃の調子が良くなるといった、あたかも「風が吹けば桶屋が儲かる」的に連鎖して肩こりが治っていく。
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慢性の肩こり・頭痛に悩む筆者も、やってみて手ごたえを実感しているが、あまたの健康法がある中、これだけ明瞭な効果が見られるメソッドはそうない。不定愁訴に悩む方は、「年だから」と諦める前に実践してみてはいかがだろう。
【今日の健康に良い1冊】
『引き合う動きが体を変える』
https://www.sunmark.co.jp/detail.php?csid=3755-5
(井本邦昭著、本体1,300円+税、サンマーク出版)
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。