取材・文/末原美裕
京都で長年活躍している目の肥えた方々が足繁く通うお店は、間違いなく感動と出会えるところ。本連載では目利きの京都人の方が太鼓判を押すお店を紹介していきます。
今回、京都人のお墨付きの場所を教えてくれるのは、綴織(つづれおり)職人であり伝統工芸士の平野喜久夫さん。
綴織は日本美術織物の最高峰だといわれており、正式名称を「西陣爪掻本綴織(つめがきほんつづれおり)」といいます。機械は使わず人の手足のみで操作する「綴機(つづればた)」を使用し、「爪掻(つめがき)」という伝統的な技法で文様を織り上げます。西陣織の中で最も歴史が長く、爪で織る芸術品とも呼ばれています。
平野さんは綴織の技術保存を目的とした「奏絲綴苑(そうしつづれえん)」を主催し、熟練職人と若手職人の交流の場の提供、そして綴織の幅広い普及と継承・保存、発展に尽力されています。
京のアーティストが集う店
ギャラリーカフェアンドバー・ハピイ
「京都の水墨画家や音楽家、イラストレーターから学生まで20代から80代までの幅広いアーティストたちが集まって交流しているお店です。美味しいお酒とカレーが絶品ですよ」と平野さんがおすすめしてくれたのは、「ギャラリーカフェアンドバー・ハピイ」。北山通り沿いの閑静な住宅街の中に、京都のはんなりとした鷹揚さと凛とした佇まいを兼ね備えたかのようなアートが様々飾られたお店があります。
温かな雰囲気の店内からは店主の山崎さんと北村さんの人柄が伝わってきます。それもそのはず、このお店の内装はお二人を中心にすべて仲間のアーティストたちとともにこだわりながら作り上げていったんだとか。
また店内では、展覧会やワークショップ、トークイベントなど多岐にわたる催しがその時々に行われていて、いつも新鮮な風が吹いています。
それでは早速、平野さんおすすめのハピイカレーとビールをいただきましょう!
「辛さと香辛料のバランスが絶妙です。お酒は強い方ではないんですが、居心地のよさからいつも大体長居をしてしまうので、お酒がよく進みます」と平野さん。
スープのようにさらりとしたカレーは口に入れて少しするとピリリと辛さが伝わってきます。これから暑くなる季節にぴったりの一品で、ビールとの相性もバッチリです。エビの旨味がカレーの美味しさを支えているポイントです。また、エビ、舞茸、牛肉が贅沢に入って、この価格は驚きです。
この他にもスペアリブカレー(昼600円、夜900円)も人気だとか。辛口が苦手な人には焼きチーズカレー(昼・夜700円)がマイルドでおすすめですよ。
「私は店主の山崎さんの親と同じくらいの年齢ですが、世代を越えてとても親しくさせてもらっています。新しいアイディアが浮かぶと“どう思う?”とよく聞いてもらっていて。そのうちに周りの人も話に加わってアイディアをくれる、とてもフレンドリーなお店です」と平野さん。美味しい食事とともにアート談義にも花が咲きます。
「<ハピイ>は一般の方と京都アーティストの架け橋的な存在のお店です。例えば一人でふらっと訪れたら、店にいる誰かが声をかけて、帰る頃には仲間になっている、そんなアットホームな場所です」と店主の山崎さん。
そんな懐の深いお店「ギャラリーカフェアンドバー・ハピイ」を訪れたら、今まで知らなかった京都のディープな世界を知ることができるかもしれません。
■平野喜久夫さん
綴織職人、伝統工芸士。1939年、京都・西陣に生まれる。綴織の機屋の父に師事し、3代目を継ぐ。川島織物セルコンに入社後、40年あまり技術を磨く。その後西陣織会館にて後継者育成などに携わったのち、2011年に綴織技術保存会「奏絲綴苑」を設立。綴織の魅力を伝えるべく、工房を公開し、見学や体験教室などを行っている。瑞宝単光章叙勲。
■ギャラリーカフェアンドバー・ハピイ
営業日:木曜日~日曜日
営業時間:11時30分~14時30分(カフェタイム)、19時~23時(バータイム)
住所:京都市北区小山西元町10 山下ビル1F
TEL:090-8218-7684
アクセス:地下鉄烏丸線「北大路」下車、徒歩9分
https://cafegalleryhappy.wixsite.com/happy
店内では随時イベントを開催。絵画や立体作品の展覧会やライブイベントなどがあります。
取材・文/末原美裕
小学館を経て、フリーの編集者・ライター・Webディレクターに。2014年、文化と自然豊かな京都に移住。