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取材・文/末原美裕

京都で長年活躍している目の肥えた方々が足繁く通うお店は、間違いなく感動と出会えるところ。本連載では目利きの京都人の方が太鼓判を押すお店を紹介していきます。

前回に続き京都人のお墨付きの場所を教えてくれるのは、「京料理 貴与次郎」店主・堀井哲也(ほりい てつや)さん。堀井さんは京都の老舗旅館「柊家」で永年修行を積み、料理長として活躍後、2011年に二条城のふもとに「京料理 貴与次郎」を開く。“ほんまもん”の京料理を味わえる数少ない名店でありながら、敷居の高さを感じさせない気さくな雰囲気も相まって、地元京都はもちろん、日本全国・海外から通うリピーター客も多い。

(堀井さんおすすめの鮮魚卸「ふじわら」はこちらから)

「京料理」の特徴について、「京料理の魅力はやはり“水”ですね。京都は盆地なので四方を囲む山々から上質な水が京都の街に流れ出ています。貴与次郎ではまいにち、“柳の水”を汲みに行っていますよ」と堀井さん。
西洞院通三条下ル東側にある「柳の水」は都でも指折りの名水で、千利休も「この水に勝るものなし」と太鼓判を押したという。この場所は織田信雄(信長の次男)の邸宅跡にあたり、名水として知られた信雄邸の井戸に日が当たらないようにするため柳が植えられていたことから、柳水(りゅうすい)と呼ばれるようになったという。

建物の奥へ行くと蛇口があり、誰でも“柳の水”をいただける。水質管理もきちんとされているので安心だ。

貴与次郎ではこの名水を一日80リットル使うという。

「貴与次郎」で提供されるお出汁やお冷や、お茶……、お客様の口に入る水はすべて“柳の水”が使われている。軟水のイメージがあるかもしれないが、軟水に近い硬水で、鰹節を煮立てても、お茶をたてても、香りたつのが早いそうだ。

胡麻豆腐 雲子 吉野あん 木の芽。一口食すと、風味が口いっぱいに広がる胡麻豆腐。贅沢に入った雲子がうれしい。あまりの美味しさに吉野あんまで飲み干してしまう。こちらにももちろん、柳の水が使われている。

鯛蕪蒸し。鯛の豊かな味わいに舌鼓を打つ。体がぽかぽかと温まる。柳の水で作った出汁もきめ細やかだ。

京都で一番のこしの強いお餅
御菓子司 中村軒

「貴与次郎オープン当初からお餅をお雑煮などに使わせていただいています。くずれることがなく、こしの強いところが特徴です。京都で一番のお餅だと思いますね」と堀井さんがおすすめしてくれたのは、桂離宮前にある「御菓子司 中村軒」。
明治16年に創業された老舗であり、地元の人たちに深く愛されているお店だ。
お餅には粘土質の土で育った、滋賀県の甲賀でとれる小佐治米が使われている。「滋賀県でも他の地域のものとは混じらないように甲賀でとれる小佐治米だけを仕入れています。味が濃厚なんです」とこだわりを教えてくださったのは、当主の中村亮太さん。井戸水で浸水した後、水を切ってつきあげ、水っぽくならないようにしているそうだ。

「中村軒のお餅がないと、お正月の準備はできないくらい、重宝させていただいております」と堀井さんも太鼓判。

「中村軒の“麦代餅(むぎてもち)”や“かつら饅頭”を大事なお客様への手土産にしています」と堀井さん。麦代餅は中村軒の名物でもあり、日持ちが1日なので、購入した当日しか食べられない。一般的にお餅を使った和菓子は求肥や砂糖、酵素を入れることが多いが、中村軒の麦代餅は餅米と井戸水だけで柔らかさを保っている。そのため、次の日にはカチカチになってしまうそうだ。「あまり知られてはいませんが、本来のお餅は次の日固くなってしまうんですよ」と中村さん。お餅本来の甘さ、そして穀物の甘味を味わえる一品だ。“あんこの甘さだけで十分。邪魔するようなものは入れたらあかん”と先々代より引き継がれているそうだ。

上品で控えめな甘さのあんの入った麦代餅。あんは昔ながらのおくどさんで炊かれている。

赤飯も堀井さんのお墨付きだ。たかきびの表皮を乾燥させて、井戸水で煮出した赤飯は綺麗な朱色をしている。噛み締めるごとに自然の甘みが感じられる。

中村軒は京都・大阪・名古屋・東京の百貨店へ数量限定で出店をしているが、4月以降は少なくしていくそうだ。「京都の人たちに育ててもらったお店。本店に来てくださるお客様を今まで以上に大切にしたいと思っています。新商品作りをしながら、これからも皆さんに喜んでもらえる和菓子を作りたいですね」と中村さん。
京都で、その日しか食べられない味をぜひ楽しみに行ってみてはどうだろうか。

■堀井哲也(ほりい てつや)さん
「京料理 貴与次郎」店主。老舗旅館「柊家」で永年修行を積み、料理長を経て2011年に「京料理 貴与次郎」開業。“貴与次郎”という店名は、店主の日舞の師匠が命名。

■京料理 貴与次郎
営業時間:11:30-14:00、17:30-21:00
定休日:月曜(祝日の場合は翌日休)
住所:京都市中京区油小路三条上ル宗林町92
TEL:074-213-1313
アクセス:地下鉄「二条城駅」2番出口より徒歩5分、「烏丸御池駅」4-1出口より徒歩10分
昼のコース2,800円〜、夜のコース7,000円〜
https://kiyojirou.com

■御菓子司 中村軒
営業時間:7:30~18:00 / 茶店 9:30~18:00 (ラストオーダー17:45)
定休日:毎週水曜(祝日は営業)
住所:京都市西京区桂浅原町61
TEL:075-381-2650
https://www.nakamuraken.co.jp

取材・文/末原美裕
小学館で11年間雑誌の編集部門において実務経験を経たのちに独立。フリーの編集者・ライター・Webディレクターに。京都メディアライン(https://kyotomedialine.com Facebook:https://www.facebook.com/kyotomedialine/)代表。2014年、文化と自然豊かな京都に移住。

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