京都五山送り火(大文字送り火)

日本の気候風土は、この国に特有の文化と慣習をもたらしました。そのことは、二十四節気に執り行われてきた様々な行事や慣わしを知ることで、より実感できるのではないでしょうか。

日本では、1872年に『改暦の詔書』が発せられるまで、千年以上に渡って「太陰暦(以下:旧暦)」が使われてきました。旧暦では、一年を二十四の季節に区分し、さらには、その季節区分を七十二もの気候変化で表していました。これは、かつて日本人が5日ごとに季節の変化を意識しながら、季節の移ろいを日々の生活に取り入れていたことを示しています。

それだけ、日本人がこの国の気候風土に感謝をし、愛していたことを物語っているのではないでしょうか? この記事を通して、改めて二十四節気を理解し、より深く日本文化の素晴らしさを感じていただきたいと存じます。

さて今回は、旧暦の第13番目の節気「立秋」(りっしゅう)について下鴨神社京都学問所研究員である新木直安氏に紐解いていただきました。

目次
立秋とは?
立秋の過ごし方とは?
立秋から残暑見舞いを用いる
立秋に見頃を迎える植物
立秋に旬を迎える食べ物
まとめ

立秋とは?

「立秋」とは、8月上旬にあたる二十四節気の一つです。この日を境に、暦の上では秋が始まり、11月初旬の「立冬」の前日までが秋とされます。

二十四節気は毎年日付が異なりますが、立秋は例年8月7日〜8月8日になります。2022年の立秋は8月7日(日)です。また、期間としては、次の二十四節気の「処暑」を迎える8月22日頃までになります。2022年の場合は、8月7日(日)〜8月22日(月)が立秋の期間です。

「秋が立つ」と書くように、立秋は「秋の気配が徐々に立ち始める期間」を意味します。ただ、実際にはこの頃はまだかなり暑い日が続く時期です。「暑さ寒さも彼岸(秋分の頃)まで」と言うように、気温が下がり、秋の気配が漂うのはまだ先になります。

立秋の過ごし方とは?

立秋の時期は、お盆の期間と重なります。先祖の霊を家に迎え、供養する行事であるお盆は、立秋の一週間後、つまり8月13日頃に始まるのが一般的です。盆入りの日には、先祖の魂が迷わずに家に帰ってくるように火を焚き(迎え火)、盆明けの日には、先祖の魂が無事にあの世へ戻れるように火を焚く(送り火)という風習があります。

また、お盆の時期には社寺や商店街、公園などで「盆踊り」が行われます。その起源は諸説ありますが、仏教の「念仏踊り」だとされています。様々な民俗芸能がお盆の祖先供養と結びつき、現代の盆踊りになりました。お盆にちなみ8月15日に踊って、16日にご先祖様の霊を送り出すという流れです。

お祭りではないですが、この時期の風物詩をもう一つご紹介しましょう。下鴨神社では、『下鴨神社納涼古本まつり』が行われます。糺の森(ただすのもり)に約80万冊の古本が並ぶ姿は圧巻です。ふらりと立ち寄ってみたら、掘り出し物に出会えるかもしれません。

立秋から残暑見舞いを用いる

立秋以降の暑さは「残暑」と呼ばれます。そのため「暑中見舞い」は、立秋以降には「残暑見舞い」に変わるので注意しましょう。どちらも、普段会えない人やお世話になった人に対して夏の健康を気遣うための挨拶状ですが、次のような違いがあります。

暑中見舞いは、一年で一番暑い時期であることを意識して書かれます。つまり“夏本番を見舞うもの”です。「炎暑厳しい折…」「梅雨明けとともに暑さもひとしおですが…」といった挨拶が使われます。

対する残暑見舞いは、なかなか終わらない暑さを意識して書かれます。つまり“暦の上で秋を迎えても続く暑さを見舞うもの”なのです。挨拶も、「立秋とは名ばかりの暑さ」「暦の上では秋とはいえ、厳しい暑さが続いておりますが」といった言葉が続きます。

また残暑見舞いは、一般的には立秋(8月7日頃)~8月末頃までに届くように送ります。遅くても「処暑の候(9月7日頃まで)」に届くようにするのがよいでしょう。

立秋に旬を迎える食べ物

立秋の時期に旬を迎える野菜・果物、魚、京菓子をご紹介します。

京菓子

観世水

京都の地下には豊富な水源があり、一説には琵琶湖と同じ量の地下水が蓄えられているとも言われています。その水は極めて良質であり、古より京料理や酒造りはもとより、京菓子にも活かされて参りました。「京の水」は、京都の食文化を語る上で欠くことのできない要素です。

今回は、下鴨神社に神饌などを納める「宝泉堂」の社長・古田泰久氏に、立秋の時期に楽しめる「京の水」にまつわる“目に涼やかな京菓子”についてお話をお聞きしました。

「当店(茶寮宝泉)では、立秋の時期になりますと『観世水』(かんぜみず)を提供しております。『観世水』には古くからの謂れがありますので、ご紹介いたしましょう。

足利義満が能楽の観世大夫に与えた屋敷には、名水の誉れ高い井戸“観世井”(かんぜい)がありました。伝説によれば、その井戸に龍が降りてきて水面が常に渦(うず)を巻いていたとかで、その渦(うず)を巻く水の様子を意匠化したのが「観世水(かんぜみず)」とされています。この古典的な意匠は、京菓子のほか扇面や装束にも用いられています。

『観世水』は、寒天と水と砂糖を煮詰めて陶器の型に入れ、緑色に染めた羊羹と粒餡を置いたのち、さらにその上から寒天を流し入れます。羊羹は水草、粒餡は水底の玉石を表現しています。この2つが入ることで、水の流れの表現として奥行きが出るのです。

社長の古田泰久氏。「茶寮宝泉」の玄関前にて。

当店の『観世水』は、口溶けを良くするために、寒天と水を主として作っています。ここ『茶寮宝泉』は京都の洛北に位置し、北山を背にして豊富な地下水脈と美しい空気、そして深い緑に恵まれた地にございます。

そうした自然の恵みから得られる湧水を、どのように菓子づくりに活かせるか常に創意工夫しております。そうした菓子づくりの姿勢を感じていただけるのが『観世水』。透明感のある水紋様をお楽しみください」と古田氏。

野菜・果物

立秋に旬を迎える野菜は、ナスです。お盆の精霊馬(しょうりょうま)にもナスが使われていますね。通年で馴染み深い野菜ですが、旬のものは甘味とみずみずしさがより引き立ちます。

また、立秋に旬を迎える果物は桃です。桃のジューシーな果肉は、肌を若返らせる効果があるとされ、皮ごと食べればよりたくさんの栄養が摂れます。タルトやゼリー、シャーベットなど、この時期ならではの食べ方で楽しんでみてはいかがでしょうか。

旬を迎える魚は、スズキです。夏を代表する高級魚のひとつで、マダイやヒラメにも劣らない美味な白身魚。夏のスズキは滑らかな舌触りを持ち、クセがないため、和洋中どんな料理にも合うとされます。洗いや刺身の他にも、塩焼きや味噌焼きなどの焼き物、蒸し物、ムニエルなどにするのもおすすめです。

立秋に見頃を迎える植物

立秋、つまり毎年8月7日頃~8月22日頃は、残暑が厳しい季節です。ここからは、そんな立秋の訪れを感じさせてくれる植物をいくつかご紹介しましょう。

立秋には、向日葵(ひまわり)が見頃を迎えます。栽培したり、ひまわり畑を見に行ったりと、様々な楽しみ方で親しまれている花です。ひまわりは、中国語で「太陽花」、英語で「Sunflower」と呼ばれ、どこの地域でも“太陽”と結びついているといえます。

また、露草(つゆくさ) も立秋の時期に咲く、鮮やかな青い花です。朝露がよく似合い、朝露が葉に弾かれると、夏の熱さを和らげるような涼しさを感じさせてくれます。蛍を飼うときに、この露草を籠に入れることから「蛍草」とも呼ばれています。

まとめ

暑さの残る中、暦の上では私達に秋を告げてくれる「立秋」。お盆や残暑見舞いなど、古くからの日本人の息遣いを感じられる文化が多くある時期でもあります。暑さが続く日々ですが、そうした日本特有の文化と慣習に少し思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

監修/新木直安(下鴨神社京都学問所研究員) HP:https://www.shimogamo-jinja.or.jp
協力/宝泉堂 古田三哉子 HP:https://housendo.com 
インスタグラム:https://instagram.com/housendo.kyoto
構成/豊田莉子(京都メディアライン)HP:https://kyotomedialine.com Facebook

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