文/川口陽海

椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症 手術をせずに治すトレーニング法【川口陽海の腰痛改善教室 第19回】

「ヘルニアが神経を圧迫しています。痛みを治すには手術した方が良いでしょう。」

腰や脚の痛みで病院にいくと、MRIなどの検査をされ、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などがみつかることがあります。

はじめは鎮痛剤や湿布などを処方され、しばらく経過をみることになりますが、なかなか治らないと、このように「手術」をすすめられることもあります。

「手術なんてしたくない」
「知り合いがヘルニアの手術をしたけれど治らなかったらしい……」
「何か他に良い方法はないのだろうか……」

いざ手術をすすめられた時、このように思われるのも無理はないでしょう。

筆者の腰痛トレーニング研究所には、このような思いから訪ねて来られる方がほとんどです。

結論から申しますと、多くの方が手術をせずに痛みやしびれなどの症状が良くなっていきます。

どのようにしたら、ヘルニアや脊柱管狭窄症の手術をせずに、ひどい痛みやしびれなどの症状を治すことができるのでしょうか?

ポイントは【除圧】

そもそも椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の手術はどのような目的でおこなわれるのでしょうか?

それは「神経の圧迫を取り除く」ことです。

痛みやしびれは、神経がなんらかの原因で圧迫されておこっている。だからその圧迫を取り除けば症状は治るはず、という考え方です。

椎間板ヘルニアの場合、椎間板から飛び出た中身(髄核)が固まって神経を圧迫しているのが原因と考えられています。

脊柱管狭窄症の場合は、様々な理由で、背骨の中にある神経の通り道「脊柱管」が狭くなって神経が圧迫されているのが原因と考えられています。

これらの原因を手術で取り除いてしまえば、神経への圧迫が消え、症状が治ると考えられているわけです。

『圧迫を取り除く』ことを『除圧(じょあつ)』といいます。

椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の手術には様々な方法がありますが、ほとんどがこの『除圧』を目的としています。

逆に言えば、手術以外の方法でも除圧ができて神経の圧迫が取り除けるのであれば、症状は治るはずですから、手術をする必要はありません。

実は、トレーニングによって脊柱や椎間板の『除圧』をすることが可能です。

背骨を支える仕組みと除圧

神経への圧迫はなぜおこるのでしょうか?またどのようにしたら『除圧』ができるのでしょうか?

それには背骨がどのようにして支えられているかを知る必要があります。

背骨(脊椎・脊柱)は、ブロック状の椎骨がたくさんつながり積み重なった構造をしているのはご存知と思います。

椎骨と椎骨の間にはクッションの役割をする椎間板があります。

椎骨と椎骨の間にはクッションの役割をする椎間板があります。

しかし骨だけでは身体を支えることはできません。まわりの筋肉によって背骨は支えられています。

背骨や身体を直立姿勢で支える役割をする筋肉を総称して『抗重力筋』といいます。

抗重力筋

これらの抗重力筋は、主に外側から背骨を支える働きをしますが、もう一つ大事な働きをするのが、内側から背骨を支える腹圧です。

腹圧は、体幹インナーマッスルと言われる腹横筋、骨盤底筋、横隔膜などによってお腹の中に生じる圧力のことです。

お腹の中に風船があるとイメージしてもらうと理解しやすいでしょうか。

体幹インナーマッスルがしっかり働いて腹圧が十分だと、下の図の左のように背骨は身体の内部から支えられます。

背骨は身体の内部から支えられます

しかし体幹インナーマッスルがうまく働かず腹圧が弱いと、上の図の右のように背骨や椎間板に負荷がかかります。

抗重力筋や腹圧が弱い

背骨や椎間板が十分に支えられず負荷がかかる

ヘルニアや狭窄が生じる

神経が圧迫される

このようなメカニズムで痛みやしびれなどの症状がおこると考えられます。

つまり抗重力筋や腹圧を強くし、背骨や腰を支える力を強くすることが『除圧』になるというわけです。

背骨の『除圧』をするためのトレーニング

背骨の『除圧』をするためのトレーニングとしては

(1)抗重力筋のトレーニング
(2)腹圧を高める体幹インナーマッスルのトレーニング

の2つがあります。

一般的に整形外科などでは、腹筋や背筋などの抗重力筋のトレーニングを指導されることが多いようです。

しかし、腰や脚に痛みがある場合、先に抗重力筋のトレーニングをおこなうとかえって症状が悪化したり、痛みのためにトレーニング自体ができなかったりすることがあります。

そのため腰痛トレーニング研究所では、まず体幹インナーマッスルのトレーニングからおこなっていきます。

体幹インナーマッスルが回復し、腹圧で内側から背骨や腰が支えられるようになってから、段階的に腹筋や背筋などの抗重力筋をトレーニングするという順番でおこなうと、痛みが悪化したりすることなく少しずつ治っていきます。

腰痛トレーニング研究所では、はじめに腹式呼吸を使ってインナーマッスルに力を入れる練習をし、次にインナーマッスルを使いながら手足を動かすトレーニングをおこなっていきます。

腹式呼吸を使ってインナーマッスルに力を入れるトレーニングは、以前の記事でご紹介しましたので、以下の記事をご覧ください。

長引く腰痛や坐骨神経痛を早く治すには?【川口陽海の腰痛改善教室 第3回】

体幹インナーマッスルを強化する『コアヌードルトレーニング』

腹式呼吸を使ったトレーニングで体幹インナーマッスルに力が入るようになってきたら、次に体幹インナーマッスルに力を入れたまま手足や身体を動かすトレーニングをおこないます。

このトレーニングには、『コアヌードル』という体幹インナーマッスルトレーニング専用の器具を使います。

【次ページでストレッチを紹介します】

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