取材・文/末原美裕

京都で長年活躍している目の肥えた方々が足繁く通うお店は、間違いなく感動と出会えるところ。本連載では目利きの京都人の方が太鼓判を押すお店を紹介していきます。

今回京都人のお墨付きの場所を教えてくれるのは、「京料理 貴与次郎」店主・堀井哲也(ほりい てつや)さん。堀井さんは京都の老舗旅館「柊家」で永年修行を積み、料理長として活躍後、2011年に二条城のふもとに「京料理 貴与次郎」を開く。“ほんまもん”の京料理を味わえる数少ない名店でありながら、敷居の高さを感じさせない気さくな雰囲気も相まって、地元京都はもちろん、日本全国・海外から通うリピーター客も多い。

看板メニューは「あわびのやわらか煮白みそ仕立て」。オープン当時からの人気定番メニューで、「このために京都に来た」と言わしめるひと皿。白みそとあわびの風味の優しい味わいが際立つ、食べ終えるのが惜しくなる美味しさだ。

あわびは非常に柔らかく、自然の甘味が感じられる。碗も最後の一滴まで飲み干してしまう。

「貴与次郎」では、朝仕入れたものはすべて堀井さん自身が下ごしらえをし、その日のうちに調理をしてしまう。そのためか季節の魚料理が特に美味しいと評判だ。

蟹・帆立・イクラ・蕪煮・柚子。

まぐろ・鯛・剣先イカの刺身。自慢の新鮮な魚の味が味わえる。

若狭湾でとれた笹カレイ。食べやすいように切り分けられており、頭以外すべていただくことができる。「身をほぐして食べると美味しいですよ」と気さくに教えてくださる堀井さん。

京都で鮮魚卸一筋
目利きの「ふじわら」が選ぶ“鮮魚”

「柊屋にいた頃から付き合いがあり、<貴与次郎>のオープン当初から支えてくれています。十数年付き合いのある、信頼、安心できる魚屋さんです。いい魚だけを集めてきてくれますよ」と堀井さんがおすすめしてくれたのは、J R西大路駅からほど近い鮮魚卸の「ふじわら」。

写真は株式会社「ふじわら」の社長、藤原 勉(ふじわら つとむ)さん。手にしているのは脂ののった鰆。

鮮魚卸を専門にしてから23年。毎日、大阪市中央卸売市場・京都中央卸売市場・神戸市中央卸売市場の3つの市場から魚を仕入れ、季節によっては淡路島や和歌山など有名な産地もまわっているという。「旬と産地にこだわって、ついている値段を見るよりも、いいものを選ぶようにしています。また商品が残らないように無理せず買っていますね」と藤原さん。ふじわらが仕入れる鮮魚への信頼は厚く、貴与次郎の他にも京都市内の有名なホテル、料亭、旅館、結婚式場などから選ばれている。

和歌山で育った鯛。生け簀の中で痩せてしまわないように仕切りのあるかごに入れられている。

どの平目も脂が非常にのっている。

「春は白魚・白子、夏は鮎・鱧、秋は甘鯛・のどぐろ、冬は鰤・河豚・スッポン・蟹が美味しいですね」と堀井さん。藤原さんによると、鰤・ハマチは日本海側が、マグロ・鯛、そして平目などの白身魚は太平洋側が、それぞれ品物がいいという。

普段の魚の選び方のポイントを藤原さんにうかがったところ、「まず第1に魚の目がキラッとしているかどうか。淀んでいるのはだめですね。第2に肥えているかどうか。肥えているということは脂がのっているということなので、魚の場合は肥えている方がいいですよ。最後に旬の魚を選ぶことが大切です」と教えてくださった。ぜひ参考にしてほしい。

「ふじわら」が選んだ鯛。確かに目が澄んでいて、脂がのっている。

残念ながら、「ふじわら」の鮮魚を一般客は買うことはできないが、「貴与次郎」のオンラインショップから鱧くき若芽や鯛味噌茶漬け、ちりめん山椒の味を楽しむことができる。藤原さんの仕入れた魚を堀井さんがじっくり丁寧に調理した品々だ。

藤原さんのおすすめは鯛味噌茶漬け。「鯛味噌茶漬けは生で食べるところが多いが、この鯛は火を通しています。鯛は火を通すことで脂ののりが一層わかるんですよ」と藤原さん。

「料亭は業者さんがあってこそ。業者さんによって支えられています。なので、自信を持って業者さんを紹介したいですね」と堀井さんは歯切れがいい。
堀井さんの誇る「ふじわら」の魚のよさをぜひご家庭でも楽しんでもらいたい。

■堀井哲也(ほりい てつや)さん
「京料理 貴与次郎」店主。老舗旅館「柊家」で永年修行を積み、料理長を経て2011年に「京料理 貴与次郎」開業。“貴与次郎”という店名は、店主の日舞の師匠が命名。

■京料理 貴与次郎
営業時間:11:30-14:00、17:30-21:00
定休日:月曜(祝日の場合は翌日休)
住所:京都市中京区油小路三条上ル宗林町92
TEL:074-213-1313
アクセス:地下鉄「二条城駅」2番出口より徒歩5分、「烏丸御池駅」4-1出口より徒歩10分
昼のコース2,800円〜、夜のコース7,000円〜
https://kiyojirou.com
貴与次郎オンラインショップ
https://kiyojirou.com/shop/

■株式会社ふじわら
営業時間:9:00〜18:00
住所:京都市下京区梅小路西中町97番地
TEL:075-311-1003
https://kyoto-fujiwara.com

取材・文/末原美裕
小学館で11年間雑誌の編集部門において実務経験を経たのちに独立。フリーの編集者・ライター・Webディレクターに。京都メディアライン(https://kyotomedialine.com Facebook:https://www.facebook.com/kyotomedialine/)代表。2014年、文化と自然豊かな京都に移住。

 

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