取材・文/末原美裕

京都で長年活躍している目の肥えた方々が足繁く通うお店は、間違いなく感動と出会えるところ。本連載では目利きの京都人の方が太鼓判を押すお店を紹介していきます。

今回、京都人のお墨付きの場所を教えてくれるのは、三軸組織(さんじくくみおり)織元 西陣織織元「綵巧(さいこう)」代表取締役の室門 恒明(むろかど つねあき)さん。

綵巧

室門さん自ら西陣織の反物の細やかな検品を一反ごとに行なっています。西陣織を仕上げるまでには多くの工程があり何人もの職人さんの手仕事を通って完成されます。その完成を確認し出荷する最後の作業であり、その出来映えに喜びもひとしおです。

室門さんが代表を務める、「綵巧」には世界に二台しか存在しない大型環状織機が稼働しています。その織機は「三軸組織」を製織できる唯一のものです。

綵巧

大型環状織機は、直径約5メートル 高さ約5メートルの巨大な織機です。「通常の織物では、縦方向のみに約10kgまでのテンションをかけて織り上げるのに対し、三軸組織は円形織機なので360度全方向に約200kgのテンションを均一にかけながら組み上げていくんです。それによって、伸縮性が生まれ、帯地として緩みにくい特徴が出るんです」と室門さん。

綵巧

三軸組織でできた織物は、独特の光沢を放ち、多彩な色糸を使用することで、30日絶妙なグラデーションを表現します。

「大型環状織機は、約50年前に京都西陣の先人が正倉院に残る組み帯を、現在の約30センチ以上の帯巾で復元することを目的として開発されました。
当初6台の大型環状織機が製造されましたが、現在、可動する機械は当社が保有する2台のみとなりました。大型環状織機は、日本の織物産業発展の足跡を証明できる貴重な歴史的遺産としての価値があります。維持をしながら、後世に伝えていくのが私たちの義務だと考えています」と室門さん。
歴史的遺産を後世に残していくため、着物だけにとどまらず、三軸組織は様々な製品との新しいコラボレーション先も広く求められているそうです。 

綵巧

三軸組織の軽やかな風合いが感じられるストール。

 

 打ちたての蕎麦に京都人も唸る
夷川つるや

綵巧

「仕事の喧騒から離れてほっとしたいときに、寄らせてもらっています。河原町二条とアクセスのいい場所なんですが、路地裏になるのでゆったりとした時が流れているんです」と室門さんがおすすめしてくれたのは、夷川(えびすがわ)の蕎麦店「夷川つるや」。ザ・リッツ・カールトン京都の裏手、鴨川と河原町通の間にお店を構えています。

夷川つるや

カウンター6席と小上がりの座敷席があります。

ご家族3人で経営されているからか、お店に入ると温かな雰囲気に包まれています。「蕎麦を食べたい時は大体、“夷川つるや”さんですね。一人の時はカウンターで、家族で訪れる時はお座敷でいただきます」と室門さん。
地元客はもとより、京都に来たら必ず立ち寄るという食通にも愛されている実力店です。

夷川つるや

息子さんの圭亮さんが描いた、まだいのイラスト付きのお品書き。前日、釣った魚の料理がメニューに加わることもあるそう。

いつもお店を訪れると、お酒に合う一品を出してもらっているという室門さん。本日も、お酒に合うメニューからおまかせで出してもらいました。

夷川つるや

注文を受けてから、かき揚げを揚げ始めます。「丁寧にご提供したいと思っているので、出来上がるまでに少しお時間をいただきます」と店主の辰見和彦さん。

とうもろこしのかき揚げ(500円・税込)。大粒のコーンの甘みが口いっぱいに広がります。

とうもろこしのかき揚げ(500円・税込)。大粒のコーンの甘みが口いっぱいに広がります。

 

さあ、お待ちかねの打ちたての蕎麦をいただきましょう。

梅しそおろし蕎麦

梅雨入りから9月までの限定メニューである、「梅しそおろし蕎麦」(1,100円・税込)。「まだか、まだか」と毎年楽しみにしている常連さんも多いのだとか。
梅、白髪ねぎ、大根おろし、しそが色鮮やかに蕎麦を彩ります。梅の酸味が涼やかさを足し、薬味でさっぱりといただけます。また、毎朝打っているという蕎麦は1本1本が美しく、しなやかな弾力があります。
食欲がなくなる夏にも、美味しくいただける一品です。

天ざる

「天ざる」(1,450円・税込)もおすすめです。天ぷらはかき揚げ同様に、注文が入ってから揚げるので、旨みが閉じ込められ、一番美味しい瞬間を頬張ることができます。
冷酒(1合950円・税込)と合わせていただきました。

「小さなお店ですが、京都独特の奥ゆかしさが感じられるところです。辰見さんご家族の心温まるもてなしも魅力です」と室門さん。
京都らしい余韻に浸りながら、洗練された味を楽しむことができます。

 

■室門恒明さん
三軸組織織元 西陣織織元である有限会社 綵巧 の代表取締役。 1948年、京都・西陣に生まれる。西陣織屋で働いたのち、1962年に2代目を継ぎ現職となる。世界に2台しか存在しない大型環状織機を使い、「京くみひも」の技術と、イタリアのトーションレースの技法との融合によって生まれた織物である、「三軸組織」という希少な織物を製織している。“最高”の西陣織を発信する織元。
http://nishijinori-saiko.jp
三軸組織に関するお問い合わせはこちら

■夷川つるや
営業時間: 12:00~14:30、18:00~20:30
定休日:木曜日
住所:京都市中京区土手町通夷川上る鉾田町299−3
TEL:075-212-3561
アクセス:京阪「神宮丸太町」下車 徒歩約5分
https://www.facebook.com/ebisugawatsuruya

取材・文/末原美裕
小学館の編集者を経て、フリーの編集者・ライター・Webディレクターに。2014年、文化と自然豊かな京都に移住。

 

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