姉がいなくなり、父親も母親と距離を保つように。母の関心は私に集中した

姉との不和が徐々に酷くなっていくのと比例して、里香さんと母親の距離も近くなっていったそう。その場面に父親はいませんでした。

「父親のことは……、たまに食卓で顔を合わすこともあったし、話をする関係でもあったんですが、元々おとなしい人だったので、家の問題に口を出すタイプでもなくて。そんな打っても響かないところは昔からだったから、母親の聞き役は父親ではなく私になったんじゃないかな。

母親は当時から気分屋のところがあって、さっきまでニコニコしていたのに、気づいたら落ち込みがすごく激しくなっていたり、思いついたように父親や姉の悪口をマシンガンみたいに話したり……。私に対しての怒りはその話をしっかり聞かなかった時に向けられました。私は母親の顔色を常に伺っていましたね。でも、それもまだ好きだったから」

しかし、母親が里香さんに固執することで、母親だけではなく里香さんと姉との仲も険悪に。高校を卒業後に家を出た姉とは音信不通な状態が続いたと言います。

「就職したとは聞いていましたが、どこにかは知りません。姉は父親だけに報告して、父親の援助もあり、家を出たみたいです。父親が私にだけ教えてくれました。今振り返ると、その時には父も母と対面することを避けていたような気がします。家族仲だけでなく、夫婦仲も破綻していたのかもしれません」

そして、里香さんが高校に入学した頃には母親は仕事を辞めて、家に引きこもるように。家にいる間ずっと顔を合わせるようになったことで、里香さんも母親との距離の取り方がわからなくなっていきます。

「私が何かを提案、例えば『時間があるなら、習い事など始めてみたら?』と言ったら、『お母さんと一緒にいるのがしんどくなったんでしょう』とまったく関係ない結論にいきつく。家にずっといることで被害妄想が激しくなっていった気がします。今まで私の成績などにも無関心だったのに、すべてを把握したいのかチェックするようにもなり、少しでも悪いところがあると、参考書を買ってきて母親が付きっきりの状態で勉強しないといけなかった。そんな時間が徐々に苦痛になっていきました」

母親を好きじゃないと思う度に襲われる罪悪感。無理やりにでも好きだと思い込むことでその罪悪感を消し去ろうとしますが……。~その2~に続きます。】

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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