文/印南敦史

写真はイメージです。

老後のお金についての不安は60代でも70代でも同じだろうが、『これだけ差がつく!老後のお金 55歳から15年で2500万円をつくる』(首藤由之 著、ディスカヴァー携書)の著者は、ある指摘をしている。

これからリタイア期に向かっていく55歳くらいの世代は、老後資金の準備が満足にできなかった人たちであり、しかも年を追うにつれて不足度合いが高まるはずなのだと。

したがって、この世代はとくに対策を打つ必要があるのだ。

自らが関わるお金を増やすには、1「収入を増やす」、2「支出を減らす」、3「いまあるお金(貯蓄など)を運用して増やす」という3つしか方法はない。状況を打開していくためには、この3つを着実に実行していくべきなのである。

「収入を増やす」を考えるなら、手段としては主に2つです。
1:「働いて収入を得る」こと
2:65歳受給開始が基本の年金を、もらう時期を遅らせて年金額を増やす「年金繰下げを行う」こと
(本書10〜11ページより)

たしかにどちらも重要だが、ここではリタイア直後の人、あるいはもうすぐリタイアすることになる人にとって喫緊のテーマでもある1「働いて収入を得る」に焦点を当ててみたい。

あらためて強調するまでもなく、人生における労働収入の重要性は誰もが実感していることだろう。ただし現役世代とは違い、これから働くにあたっては多くの場合「上」を目指す必要はない。

働く時間も仕事内容もすべてが自由なのだから、自分の思うとおりにすればいいのである。

そこで、「枠」にはまらず高齢者が自由に働く手段として注目されているのが「ちょい働き」。短時間アルバイトとフルタイムの中間にあたる働き方だ。

フルタイムほど一生懸命に働きはしないのですが、かといって、ボランティアではなく一定時間をきちんと働くといったイメージの就労です。
週に20時間以上働くと雇用保険に加入する必要が出てくるので、「雇用」を連想させないという意味では、「週に20時間以内で働く」が「ちょい働き」の一つのイメージと言えるかもしれません。「週に3日、1日6時間」や「週に4日、1日4〜5時間」といった感じです。(本書75ページより)

もう少し本格的に働きたいなら、雇用保険のことは考えず「週に4日、1日6〜7時間」や「週に3日、1日に7〜8時間」働くというのもいい。要するに1「フルタイムでは働かない」、2「責任が伴う仕事ではない」、3「アルバイト感覚で勤める」という特徴を持った働き方が「ちょい働き」のイメージだ。

基本は「自由」なのだから、モチベーションもおのずと高まっていくはず。「老後も働かなければ」と悲観的になるのではなく、あくまでも自分がストレスなく働けることを重視すべき。「ちょい働き」なら、それができるのである。

だからこそ、忘れるべきでないこともある。

できれば自分の気に入った仕事をするほうがいいので、仕事探しには十分な時間をかけてください。大丈夫です。人手不足はこれからさらに進みます。シニア向けの仕事はますます増えていくでしょう。(本書77ページより)

「ちょい働き」と聞けば、誰にでもできる簡単な仕事を連想するかもしれない。もちろんそういう仕事も多いだろうが、今後は高度人材も不足することになる。そのため、専門的な分野でのちょい働きも増えていくと考えられるのだ。

現役時代に取り組んできた分野で、経験や技術を活かしながらちょい働きできると考えれば、期待感もより高まっていくに違いない。

ただし60代の後半に年金をもらいながら働く場合(厚生年金に加入して働く場合)は、一定レベルより給与収入が高いと年金がカットされる制度があるので注意が必要だ。

問題となるのは、老齢厚生年金のうちの「報酬比例部分」にあたる年金。年金がカットされるメカニズムは、次の計算式に基づいているという。

月額の年金額(報酬比例部分)+賞与込みの月収(給料の月額+年間賞与÷12) VS.  51万円
(本書78ページより)

「賞与込みの月収」とは、直近1年間の賞与を月々にならしたものと月給を足して合わせたもの(「総報酬月額相当額」)。それに月額の年金額を加えた数字と「51万円」を比べるのである。

前者が51万円と同じかそれより少なければ問題は生じず、年金はそのまま全額がもらえる。しかし前者の数字が51万円を上回ると、上回った分の半額が年金からカットされていくのだ。

もっともこの制度、高齢者の労働意欲をそぐなどとして近年、条件緩和が続いています。(本書80ページより)

より働きやすい条件が整うことに期待したいが、いずれにしても、無理がなく損のない範囲で「ちょい働き」を楽しみたいものである。


『これだけ差がつく!老後のお金
55歳から15年で2500万円をつくる』
首藤由之 著
1540円
ディスカヴァー携書

文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

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