結婚の催促も受け止め続け……。結婚できた時、やっと上がれたと思った
そのまま何事もないまま実家で過ごす日々だったそうですが、樹さんが30歳を過ぎた頃から、両親から結婚への干渉が始まったそう。当時妹は海外の企業へ転職しており、その願望を一身に背負っていたと言います。
「実家から通える距離に就職してしまうと、家を出るきっかけがないんです。それに妹が海外へ行ってしまったことで私は両親の側にいなければいけないと、良い子の使命感もあって。母親から付き合っている人はいるのかと初めて聞かれたのは、20代後半になってからだと思います。私たち家族は娘の異性関係を知りたくないのか、一度も聞いてこなかったし、私も妹も彼氏ができたとしても、出かける時は友人だと嘘までついて隠していました。学生の頃からそんな会話を両親としたことがなかったので、触れてはいけない部分だと認識していましたね。そんな母親が初めて30歳過ぎになって聞いてきたんです。その時は、実は彼氏がいたんですが、紹介してとか言われると嫌だなって思って、隠してしまいました。そしたら母親から今まで一度も異性関係がない子だと心配されたのか、結婚への干渉が始まったんです」
その後は堰を切ったように母親からの干渉が始まったそう。しかしそれについても拒否できずに受け止め続け、35歳の時に結婚相談所で紹介された男性と婚約に至ったとか。
「母親は結婚相談所、仲人協会への登録はもちろん、メイクレッスンなどの予約も取ってきて、私の身なりまで整えようとしてきました。正直、うんざりでしたよ。私は男性経験がそんなになかったこともあり、最初の頃は婚活がまったくうまくいかなくて。そのことに関して母親はもちろん責めてくることはないんですが、アドバイスをくれる感じで、それが余計に惨めで……。今の夫と出会えた時は結婚できる喜びというより、結婚しなくてはという強迫観念から解放される喜びのほうが強かった気がします」
最後に、現在の家族、親子関係について聞いてみました。
「良くも悪くも普通です。いまだに本音をぶつけることはできていません。今までずっとそうだったんだから結婚したから、離れて暮らしたからといって変わりませんよ。両親に夫婦の愚痴を言ったこともありません。まぁ両親も結婚したことで私は(未婚という題から)上がったと、もう関心はないんじゃないのかな。今不妊治療中なんですが、そのことも両親は知りません」と語ります。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。