マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の用語や問題を解説するシリーズ。今回は、リーダー(マネージャーや管理職)が心得ておくべき思考法や組織作りのポイントについて解説します。

はじめに

「景気が悪いから」「他部署の連携が遅いから」——。目標が未達成に終わった際、私たちはつい自分以外の何かに原因を求めてしまいがちです。しかし、外部環境を言い訳にした瞬間、その組織の成長は止まり、衰退が始まります。

本記事では、コントロール不能な要因を排除し、すべてを「自責」として捉えることで、逆境を飛躍のチャンスに変える具体的な思考法と、リーダーが心得ておくべき「変数」の導き出し方を解説します。この記事を通じて、部下の成長を促し、いかなる環境下でも成果を出し続ける強固な組織作りのヒントを掴んでいただければ幸いです。

「他責」という甘い罠が組織の成長を止める

ビジネスの現場において、目標達成が危ぶまれる事態は日常茶飯事です。その際、多くのビジネスパーソンが陥るのが「他責」の思考です。「ヒトが足りないから」「市場が冷え込んでいるから」「コロナ禍だから仕方がない」……。これらは一見、正当な理由のように聞こえます。しかし、これらの外部環境に原因を求めることは「無意味」です。

なぜ無意味なのか。それは、外部要因を原因とした瞬間に、自分たちが「改善できること」が世の中から消えてしまうからです。自分に非がない、環境が悪いのだと考えたとき、人はそれ以上の思考を停止します。「自分にはどうすることもできない」という諦念は、自己成長の機会を完全に奪い去るのです。

さらに恐ろしいのは、この「他責」の思考が組織全体に伝染することです。一人が言い訳を始め、周囲や上司がそれを「そうだね、仕方ないね」と容認してしまえば、組織内には「目標は達成できなくても、正当な理由があれば許される」という誤ったルールが形成されます。

しかし、現実は非情です。期末の評価タイミングになれば、言い訳がどれほど立派であっても、未達成という事実に変わりはありません。上司が口では「情状酌量」を見せたとしても、最終的な評価(昇給、昇格、賞与)にはシビアに反映されます。つまり、どれだけ「免責」されたと錯覚していても、実態として免責されているわけではないのです。この「免責の錯覚」こそが、個人の成長を阻害し、ひいては組織を腐敗させる元凶となります。

リーダーが心得るべき「真の優しさ」とは何か

部下を持つリーダーにとって、最も重要な責務の一つは「部下を成長させること」です。しかし、ここで多くのリーダーが陥る間違いがあります。それは、「部下を傷つけないように、優しく接し、未達成の理由を一緒に探してあげる」という行為です。

例えば、部下が「他部署の確認が遅れて納期が遅れました」と報告してきた際、良かれと思って「それは災難だったね、次からは気をつけて」と声をかける上司がいます。しかし、これは「優しさ」ではありません。これは部下の成長機会を奪う「害悪」でしかありません。

部下に自責の念を持たせることができない上司は、部下の中に「他責の余地」を残してしまいます。他人のせいで仕事がうまくいかなかったと認識した部下は、次回の仕事でも「他人が動いてくれない」という壁にぶつかった際、自らそれを突破しようとする工夫を放棄します。

与えられた役割に対して、責任は100%発生しています。90%でもなく、99%でもありません。たとえ周囲の協力が得られなかったとしても、その協力を含めてマネジメントし、結果を出すことが「役割」なのです。

「部下を傷つけたくない」というリーダーの感情は、実は部下のためではなく、リーダー自身が「嫌われたくない」という自己保身から来ている場合がほとんどです。真に部下の成長を思うのであれば、たとえ耳が痛いことであっても、結果に対して言い訳を封じ、「君の何が不足していたから、この結果になったのか」を徹底的に自問自答させなければなりません。自らの不足を認識して初めて、人は「次はこう変えよう」という成長のサイクルに入ることができるのです。

「変えられないこと」に執着する無駄を省く

自責の思考を持つ際に重要となるのが、「世の中には変えられるものと、変えられないものがある」という冷徹な事実を認識することです。

世の中には二通りの誤解をしている人がいます。

一つは、「自分の努力次第で、全ては思い通りになる」という万能感。
もう一つは、「自分の力では、何をやっても世の中は変わらない」という無力感。

ビジネスにおいて成果を出し続ける人は、この両極端な思考を排し、冷静に「何がコントロール可能で、何が不可能か」を見極めています。多くのビジネスパーソンが疲弊し、結果を出せない理由は、次の2パターンに集約されます。

「変えられないこと」を変えようと、無駄なエネルギーを費やしている人
「変えられること」を、変えられないと思い込んで放置している人

例えば、景気の動向や競合他社の戦略、過去の決定事項、そして他人の性格などは、基本的には「変えられないこと」(定数)です。これらに対して「もっと景気が良ければ」「あの人がもっと理解のある人なら」と不満を並べるのは、沈んでいく夕日を「沈むな」と説得するようなものです。

一方で、自分自身の行動、情報の伝え方、時間の使い方、アプローチの優先順位などは「変えられること」(変数)です。逆境に立たされたときこそ、私たちは「変えられないこと」への執着を早々に捨て、残された「変えられること」に全神経を集中させる必要があります。この切り替えの速さが、ピンチをチャンスに変えるための絶対条件です。

成果を左右する「変数」を見つけ出す技術

では、具体的にどのようにして「変えられること」を見つけ出せばよいのでしょうか。ここで役立つのが、一次方程式の考え方です。

y = ax + b

この数式において、「y」は「成果・結果」を表します。そして、右辺にある「a」や「b」は、私たちがコントロールできない「外部環境」(定数)です。一方、「x」こそが私たちが自らの意志で動かすことができる「行動」(変数)です。

成果「y」を最大化するためには、どの「x」を動かせば「y」が最も大きく反応するかを見極める必要があります。これを「変数の特定」と呼びます。

よくある失敗例を挙げましょう。大事なプレゼンで失敗し、結果が出なかったとします。ここで「資料の見た目が良くなかったからだ」と考え、次回のプレゼンに向けてさらに数日間かけてデザインを凝ったものに作り直したとします。しかし、結果がやはり変わらなかったとしたら、その人にとって「資料の完成度」は変数ではなかった、ということです。つまり、資料をいくら作り込んでも成果「y」には影響しない「定数」のようなものに時間を費やしてしまったわけです。

そこでアプローチを変えてみます。「説明の順番」を変えてみる、あるいは「最初の1分で結論を伝える」という具体的な行動「x」を試したところ、プレゼンの成功率「y」が劇的に向上したとします。このとき初めて、「伝え方の構成」こそが、この仕事における真の「変数」であったことに気づくのです。

仕事の成果が出ないとき、多くの人は「努力が足りない」と考えがちですが、実際には「変えるべき変数ではない場所を、一生懸命叩いている」場合が非常に多いのです。

「どこに変数が隠れているのか」を試行錯誤し、見つけ出すプロセスそのものが、プロフェッショナルの仕事の本質と言えるでしょう。

自責の技術が組織に「自走」をもたらす

「自責」の思考を組織に浸透させることは、単に厳しい環境を作ることではありません。それは、メンバー全員に「自分の人生の手綱を、自分で握らせる」という極めて前向きな取り組みです。

他責の組織では、メンバーは常に何かの被害者です。景気が悪いから給料が上がらない、上司が無能だからチャンスがない、と環境の奴隷になってしまいます。これではモチベーションが続くはずもありません。

しかし、自責の技術を身につけた組織では、風景が一変します。

「今の環境(定数)が最悪だとしても、その中で成果を出すための変数(x)は必ずどこかにあるはずだ」

そう信じて疑わないメンバーが集まる組織は、驚異的な強さを発揮します。

ピンチは、これまでの「変数」が通用しなくなったというサインに過ぎません。これまでのやり方「x」では結果が出なくなったとき、新しい「x」を探し出す必要に迫られます。この探索のプロセスこそが、個人を成長させ、組織をイノベーションへと導くチャンスなのです。

リーダーは、部下が「外部環境」という逃げ道に逃げ込もうとしたとき、毅然としてその道を塞いでください。そして、「君の力で変えられることは何か?」と問い続けてください。その問いかけが、部下の中に眠っている創造性と責任感を引き出し、いかなる逆境をも跳ね返す最強のチームを作るための第一歩となるのです。

ピンチをチャンスに変える実践ステップ

では、具体的にどうすれば自責思考を身につけ、ピンチをチャンスに変えられるのでしょうか。以下の実践ステップをご紹介します。

ステップ1:外部要因への言及を完全に封じる

まず、目標未達成の際に「景気」「市場」「他部署」といった外部要因を理由にすることを、自分自身に禁じてください。これらは変えられない「定数」です。定数に注目しても、改善策は生まれません。

ステップ2:「自分には何ができたか」を徹底的に考える

次に、「自分の行動のどこに改善の余地があったか」を洗い出します。アプローチの方法、優先順位のつけ方、コミュニケーションの取り方など、自分がコントロールできる範囲で見直すべき点を具体的にリストアップしましょう。

ステップ3:「変数」を見つける試行錯誤を繰り返す

結果を変えるための「真の変数」は何か、仮説を立てて検証する姿勢が重要です。一つの方法で結果が変わらなければ、別の変数を探します。この試行錯誤のプロセスこそが、成長の源泉なのです。

ステップ4:上司は部下に厳しく自責を求める

マネジメント層の方は、部下が外部要因を理由にした際、優しく同情するのではなく、「あなた自身にできたことは何か」を問い続けてください。これが部下の成長を促す唯一の方法です。

ステップ5:小さな成功体験を積み重ねる

自責思考で行動し、変数を見つけて結果を変えた経験は、大きな自信になります。小さな成功体験を積み重ねることで、「自分の力で状況を変えられる」という確信が生まれ、さらに大きなピンチにも立ち向かえるようになります。

外部環境という言い訳を手放すことは、一見厳しく感じるかもしれません。しかし、それこそが真の自由への第一歩です。コントロールできないものに振り回されるのではなく、コントロールできるものに集中する。この思考の転換が、ピンチを最大のチャンスに変える鍵なのです。

まとめ

目標未達成を外部環境のせいにした瞬間、成長は止まり、組織は衰退への道を歩み始めます。責任は常に100%発生しており、外部要因という言い訳は結局のところ免責機能を果たしません。重要なのは、自責思考で物事を捉え、「変えられること」と「変えられないこと」を見極めることです。

「変数」という考え方を用いて、結果を変えられる要因を試行錯誤しながら見つけ出す。この姿勢こそが、仕事の成果に直結します。そして、自責で認識することで、ピンチは必ず成長のチャンスへと変わります。

マネジメント層の方は、部下に対して厳しくても自責を求める勇気を持ってください。それが真に部下の成長を促す唯一の方法です。外部環境という言い訳を手放し、自分の力でコントロールできる領域に集中する——この思考の転換が、あなたと組織を次のステージへと導くのです。

識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/

 

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