「当時、すでに(初代)『フェアレディZ』が売られていて、アメリカでも人気を博していました。けれど私はフェアレディの方が好きだったので、営業先を巡回している途中、休憩と冷やかしを兼ねて売り手宅の庭をのぞいてみました。幌はなくエンジンも動かない状態でしたが全体的にキレイで、なにより「直して乗ろう」という気持ちが湧いたため、購入を決めました。アメリカはクルマの売買に関してとても大らかですが、ナンバーのないクルマを動かすことには厳しく、タイヤが道路に接触することすら許されません。近くでレンタルトレーラーを借り、自分で自動車修理工場へと運び込みました」
「とりあえず動くように」を目標に、はじめてフェアレディに触れる純一さん。頻繁に自動車修理工場に顔を出しては修理を手伝い、フェアレディの構造や修理の手順を学びます。
自分の手を汚しながら修理を終えたフェアレディ。まだ幌のない状態でしたが、はじめての走行は予想を越えて心地よく、すぐにアメリカで売れた理由を理解したそうです。
それから数か月後。たまたま手にした自動車雑誌にて、同型のフェアレディが売りに出ている記事を目にします。中古車店はサンディエゴにあり、ロサンゼルスからクルマで2時間ほどの道のり。純一さんは仕事中にプラリと出かけ、その場で購入します。
「クルマの維持費が驚くほど安い、アメリカだからできた衝動買いですね。このフェアレディも不動車だったため、1台目のフェアレディと同じ自動車修理工場へ持ち込み、修理してもらいました。当時のアメリカにはフェアレディを直すためのパーツが潤沢に流通しており、自分で購入して持ち込むことで修理にかかる費用を抑えました」
この頃、街で目にする『ハーレーダビッドソン』がとても格好良く見え、一ヶ月ほど悩んだ末に購入します。快適で疲れない乗り心地は、アメリカの道路事情にとてもよくあっていると感心したそうです。
ハーレーダビッドソンの購入から2年後。カリフォルニア州のハイウェイパトロールが、オークションにてポリスバイクを払い下げているのを知った純一さんは、試しに相場より安い価格で入札します。
「好きでよく見ていたテレビドラマ『CHiPs(日本放送時タイトル『白バイ野郎ジョン&パンチ』)』に出てくるポリスバイク(カワサキ『Z1000P(Z1000Aの特別仕様)』)が出品されていたので、つい入札してしまいました。数日後に落札できたと連絡があり、嬉しさ半分、困惑半分で購入しましたね。Z1000Pに乗ってみると速いこと! クルマが逃げられないのも納得です。あまりに速すぎて恐いので、2年ほどで売ってしまいました」
フェアレディが2台、オートバイが2台と合計12輪で、アメリカでのクルマ趣味を満喫する純一さん。この頃になると積極的にフェアレディのオーナーズクラブやダットサンのオーナーズクラブに参加し、同じ趣味を持ったオーナーと交流します。多くのフェアレディ情報を集めることで、気になる1台があらわれました……。
【後編】へ続きます!
取材・文/糸井賢一(いといけんいち)
ゲーム雑誌の編集者からライターに転向し、自動車やゴルフ、自然科学等、多岐に渡るジャンルで活動する。またティーン向けノベルや児童書の執筆も手がける。