
ライターI(以下I):『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(以下『べらぼう』)第26回では、田沼意次(演・渡辺謙)の嫡男意知(演・宮沢氷魚)と花魁誰袖(演・福原遥)とのやり取りの中で「若年寄」というフレーズが登場しました。
編集者A(以下A):父が老中の田沼意次というプリンスっぽい立場ですが、親子二代で幕閣として政務にあたるという例はあまりありません。そもそも若年寄は老中への登竜門的な役職で、名門・譜代大名の「指定席」。若年寄一覧をみても「堀田」「阿部」「土井」「松平」「青山」など譜代の大名の名が連なります。
I:その中に、吉宗将軍の時代に600石だった田沼家が就任するわけです。しかも父意次は老中。これは嫉妬の嵐だったと思います。
大河ドラマレジェンド同士の競演
I:そういう前振りがあって、徳川治貞(演・高橋英樹)が登場しました。
A:徳川治貞は御三家の紀州藩主。父の宗直が徳川吉宗の従兄弟という間柄になります。1995年の大河ドラマ『八代将軍吉宗』では、柄本明さんが演じました。西田敏行さんの吉宗と柄本さんの宗直の掛け合いが秀逸だった記憶があります。
I:大河ドラマファンからすると、柄本明さんの息子が高橋英樹さんということになるのですね。
A:高橋英樹さんは本作で大河ドラマ10作目の出演になります。1973年の『国盗り物語』で織田信長を演じた時は29歳でした。『翔ぶが如く』での島津久光を演じたかと思えば、『篤姫』では島津斉彬を演じる。『義経』での藤原秀衡も印象深いです。私の世代では信長といえば、『徳川家康』での役所広司さんが頭に浮かぶのですが、ひと世代前の大河ファンにとっては、信長といえば高橋英樹さんという人が多いようです。
I:その高橋英樹さんと、同じく大河ドラマのレジェンド俳優の渡辺謙さんが相まみえました。なんだか手に汗握るすごい場面ですよね。
A:さりげなく記念碑的な場面をぶち込んできました。そして、このふたりのやり取りからも非名門の田沼家への風当たりの強さを感じるわけです。前述のように息子の意知までもが幕閣への道を歩もうとしている渦中でこの場面。時代がどんどんきな臭くなってきます。
I:制作陣は、今後の事件をどのように描くつもりなのでしょうか。期待半々、恐れ半々ですね。

●編集者A:書籍編集者。『べらぼう』をより楽しく視聴するためにドラマの内容から時代背景などまで網羅した『初めての大河ドラマ~べらぼう~蔦重栄華乃夢噺 歴史おもしろBOOK』などを編集。同書には、『娼妃地理記』、「辞闘戦新根(ことばたたかいあたらいいのね)」も掲載。「とんだ茶釜」「大木の切り口太いの根」「鯛の味噌吸」のキャラクターも掲載。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好きで、猫の浮世絵や猫神様のお札などを集めている。江戸時代創業の老舗和菓子屋などを巡り歩く。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり
