320iのエンジンをいたく気に入った友之さんですが、購入から2年半ほどでエアコンのトラブルが発生。また、当時は「BMWはお金のある人が、ステータスで乗るクルマ」という偏見が強く、職業柄、周囲やお客さんからの“見られ方”を気にしなければならないこともあって乗り換えを決めます。次に選んだのは世界ラリー選手権(通称“WRC”)で一斉を風靡したクルマ、ランチアの『デルタHFインテグラーレ16v』です。
「デルタはWRCで活躍したというドラマもありますが、何よりクルマを降り振り返って見たとき、ニヤリとできるデザインで決めました。僕はフェンダーが張り出したモデルが好きなんです。デルタは速くて、とっても面白いクルマだったのですが、評判通りに熱に弱く、夏場は毎週のように調子が悪くなって修理工場へと持ち込んでいましたね」
デザインと性能には満足していたデルタ。しかし高性能車特有の扱いの難しさやトラブルの多さに疲れを感じ、2年ほどで売却します。次は「もう少しおとなしく、疲れないクルマを」と思い、冷やかし半分でアルファロメオのディーラーに訪れたところ、スタッフにフィアットの(初代)『バルケッタ』を勧められます。
「オープンカーに乗ったのはバルケッタがはじめてで、そのあまりの気持ちよさにびっくりしました。速さはそこそこですが、軽さのおかげで運転するのがとても楽しいんです。試乗中に「これ、買います!」って言っちゃいました」
30歳をこえて経済的にも余裕ができたこともあり、バルケッタは新車で購入します。この頃になるとインターネットを利用しての交流が盛んになり、友之さんもインターネットでオーナーズクラブに登録。積極的にオフラインミーティングに参加し、バルケッタのオーナーであること、そしてクルマ趣味を楽しみます。
ですが33歳の時、箱根の一般道を走行中に事故を起こしてしまいます。幸い、友之さんは軽傷で済みましたが、バルケッタは廃車となってしまいました。
その後、自動車保険にて補償されたお金でアルファロメオの2代目『スパイダーTS』を購入します。デザインと排気音に魅せられての購入でしたが、いざ所有すると車重の重さとボディ剛性の低さがどうしても気になり、程なくして売却してしまいます。
【後編】へ続く
取材・文/糸井賢一(いといけんいち)
ゲーム雑誌の編集者からライターに転向し、自動車やゴルフ、自然科学等、多岐に渡るジャンルで活動する。またティーン向けノベルや児童書の執筆も手がける。