『歩くとすねの外側やふくらはぎが痛くなる』というのは、坐骨神経痛でよく見られる症状です。これは足の指の機能(筋力)が衰えてしまったせいかもしれません。

足の指はとてもたくさんの役割を担っています。

人類の進化から考えると、猿として樹上生活していた時は、足の指は主に木の枝などをつかんで身体を支えたり移動したりするのに役立っていたでしょう。

二足歩行で地面を歩くようになってからは、山や岩場など凸凹の不整地、また水辺など不安定な足場でも器用に足の指を使うことで、2本の足だけで身体を支えることができたでしょう。

そのために手を使って道具を使うことができますし、生活圏をどんどん広げることができました。その結果が現代文明につながっているとも言えるでしょう。

しかし現代人は、靴を履いて平らなところばかり歩いています。

するといつの間にか足の指を使わなくなり、機能が衰えてしまっているのです。

足の指の役割

足の指には大きく分けて3つの役割があります。

(1)身体を支える
(2)運動する(歩く)
(3)バランスを取る

これらの役割はそれぞれ別々に働くわけではなく、常に同時に働いています。

例えば歩く時は、運動しながら身体を支え、バランスも取っています。

例えば電車で立っている時は、電車の揺れに合わせて身体を支えながら、やはりバランスを取っています。

もちろんこれは足だけでなく全身でおこなわれていることですが、人体の一番下で接地している足、とくにその指が担う役割は大変大きなものなのです。

足の指が弱いと他の関節に負担がかかる

足の指が衰え弱まると、その役割を他の関節や筋肉がカバーすることになります。

それは主に足首や膝や股関節です。また腰から上に影響することも少なくありません。

例えば歩く時、身体を前進させるために後ろに脚を蹴り出しますが、最後にしっかり押し出すには足の指の力が大事になります。

試しにいつもより足の指を使うように歩いてみてください。きっと普段より力強く速く歩くことができるでしょう。

例えばかかとを上げてつま先立ちでバランスを取る時、足の指に力を入れて床をとらえるようにしなければ、グラグラとしてうまくバランスを取ることができないでしょう。

また試しに、立った状態で足の指を少し浮かして踵を上げてみてください。わざと足の指を使わずにバランスを取るのです。

すると、その場で静止することすら難しくなりますよね?

この時、バランスを取るために踏ん張ろうとすると、ふくらはぎや太ももやお尻や腰など、いろんなところに負担がかかるのがわかりますか?

今度は足の指をちゃんと使って踵を上げてみてください。そんなに力を入れなくてもなんなくバランスが取れるはずです。

足の指をしっかり使えるかどうかでこれほどの違いがあるのです。

足の指が弱いと足首を支える筋肉に負担がかかる

足の指が弱くて踏ん張れずバランスが取れない場合、それを補うのはまず足首(足関節)とそれを支える筋肉です。

とくに左右方向のバランスを取る動き、つまり足首を内や外にひねるような動き、これを足関節の回内回外といいますが、この負担がとても大きくかかります。

この左右方向のバランスを取ろうとする時負担がかかる筋肉が、ふくらはぎの筋肉=腓腹筋や、ふくらはぎの外側にあるスジ状の筋肉=腓骨筋などです。

この負担による疲労が蓄積していくと、筋肉が緊張や血行不良をおこし、トリガーポイント=発痛点が生じてふくらはぎやすねの外側に痛みやしびれがおこるようになってしまいます。

腓腹筋や腓骨筋のトリガーポイントによる痛みは次のような部分にあらわれます。

<腓腹筋のトリガーポイント好発部位とその痛み>

<腓骨筋のトリガーポイント好発部位とその痛み>

まさによくある足の痛みのパターンと一致すると思いますが、あなたの痛みとも似ているでしょうか?

このような痛みは背骨や神経からではなく、筋肉から起こることがあるのです。

トリガーポイントについては本連載ではおなじみですが、詳しく知りたい方は次のページをご覧ください。

腰痛・坐骨神経痛のトリガーポイント治療(https://www.re-studio.jp/backpain/pg122.html

歩く時の痛みを改善するエクササイズ

今まで見たように、歩く時にふくらはぎやすねの外側に痛みが起こる場合、原因は足の指の衰え=機能・筋力低下の可能性があります。

したがって、足の指の機能・筋力を回復できれば、ふくらはぎやすねの外側の筋肉の負担が減り、痛みが改善します。

足の指のエクササイズは様々なものがありますが、筆者の腰痛トレーニング研究所では、つま先立ちのエクササイズをおすすめしています。

やり方はごく簡単。

イスの背もたれなどに軽く手を当ててバランスをとりながら、踵を少し上げて指で踏ん張ってバランスを取ります。

そのままゆっくり踵を上げ下ろしします。下ろす時は踵を下までつけずに数ミリ浮かしたところで止めてください。

そこからまた踵を上げていき、指で踏ん張ります。

これを10~30回ほど繰り返します。

慣れてきたら手を離して支え無しでやってみましょう。

これがうまくできるようになってきたら、歩くときも足の指を使うようにしてみてください。

きっと痛みが減っていくでしょう。

※このエクササイズをすることで痛みが出たり、症状が悪化したりするような場合はやめてください。

以下の記事でも腰痛・坐骨神経痛改善法をご紹介していますので、ぜひお読みください。

坐骨神経痛を改善!足首をほぐすと痛みがやわらぐ簡単マッサージとストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第51回】
腰痛・坐骨神経痛に効くストレッチ 「内腿のつけ根」をゆるめて痛みを改善!【川口陽海の腰痛改善教室 第53回】
ヘルニア・坐骨神経痛 腿の裏側の痛みを改善するストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第50回】
腰痛・坐骨神経痛の改善はストレッチから! 痛む部位別にわかる簡単ストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第28回】
慢性腰痛を改善!誰でも簡単にできて効果的な6つのストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第21回】

文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html

腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(健康プレミアムシリーズ)川口陽海(著/文) 永澤守(監修) 発行:アスコム
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