文/川口陽海
もしあなたがなかなか治らない腰痛でお悩みでしたら、積極的に運動することが最も効果的な解決策かもしれません。
日本整形外科学会と日本腰痛学会の監修により、7年ぶりに改定された「腰痛診療ガイドライン2019」によると、「慢性腰痛」に対しては、「運動療法は有用である」として強く推奨(推奨度1、エビデンスの強さB)されています。
では慢性腰痛を改善するにはどのような運動が良いのでしょうか?
運動療法には、ウォーキングや水泳などの有酸素運動、自分の体重やダンベルなどを使っておこなう筋力トレーニング、ストレッチング(柔軟体操)など様々な方法がありますが、慢性腰痛を改善する効果については、運動の種類による差というのは実はありません。
筆者の腰痛トレーニング研究所では、体幹インナーマッスルトレーニングやストレッチなど様々な方法を取り入れて指導をおこなっています。
そこで今回は、誰でも簡単に安全にできて、慢性腰痛を改善するのに効果の高いストレッチをご紹介します。
あなたの症状に合うものがみつかりましたら、それを日々続けてください。
ストレッチの目的と効果
慢性腰痛でストレッチをするのは、主に次のような目的があります。
1.筋緊張をゆるめる
2.血流を改善する
3.姿勢・関節アライメントを改善する
4.運動性を高める
1.筋緊張をゆるめる
慢性の痛みがあると、患部やそのまわりの筋肉は緊張して固くこわばってしまいます。
そうするとその部位の血行が悪くなり、ますます筋肉が緊張し、さらに痛みが増す、という悪循環に陥ります。
しかしストレッチをすることで、固く緊張した筋肉は伸ばされて弛緩し、ゆるんでいきます。
柔らかくゆるむと血流が回復し、筋肉は回復していきます。
2.血流を改善して痛みをやわらげる
固く緊張し、血行が悪くなった筋肉の中には、ブラジキニン、ヒスタミンなどの「発痛物質」といわれる痛みの原因となる物質がたまってしまいます。
ストレッチをすることで、患部や全身の血流が改善されると、筋肉内にたまっていたこの「発痛物質」が洗い流され、痛みやシビレなどの症状が改善します。
3.姿勢・関節アライメントの改善
筋肉が緊張して固くこわばると、関節や姿勢のバランスが崩れ、「歪んだ」状態になることがあります。
「歪んだ」ままだと、緊張した部分はますます固くなったり、弱くなったりしてさらに痛みが悪化してしまいます。
ストレッチして筋緊張がゆるむと、姿勢や関節アライメントが正常に回復し「歪み」が改善します。
正しい姿勢や関節アライメントを維持すると、筋肉はゆるみやすくなり、正常に回復しやすくなります。
4.運動性を高める
痛む部分をかばってしまうために、他の部分の柔軟性や筋力が低下したり、姿勢が悪くなってしまったりすることがあります。
それを予防、改善するのにストレッチはとても有効です。
緊張してこわばった筋肉をストレッチでゆるめることで、関節可動域や柔軟性を回復すると、運動量の低下を防ぐことができ、筋力の低下や血行不良を改善することができます。
これらの効果で、ストレッチをすると痛みが改善していきます。
ストレッチをする際の注意
ストレッチを安全に効果的におこなうためには、いくつか注意するべきことがあります。
以下の注意事項を良く理解しておこなってください。
ストレッチをする場所
・安定した平らな場所を選び、リラックスした服装・姿勢でおこなってください。
・布団やベッドの上では危ない場合があります。
無理に行なわない
・ストレッチは自分の身体の硬さにあわせておこなってください。
・これからご紹介する画像などと同じようにできなくても構いません。
・無理に行なうとかえって痛みが悪化してしまう場合があります。
ストレッチのポイント
・形や筋肉を伸ばす時間などに意識がいきがちですが
(1)動作をゆっくり行なう
(2)動作と呼吸を合わせる
(3)伸びている感覚に意識を集中する
(4)ゆっくり味わって戻す
この4つが大切です。
・伸ばす時に息を吐きながら、できるだけ身体の力を抜いてください。
・ストレッチのポーズがうまくできなくても良いので、筋肉が気持ちよく伸びる感覚を意識してください。
【次ページよりストレッチを紹介します】