文/川口陽海

腰痛・坐骨神経痛の改善はストレッチから!痛む部位別にわかる簡単ストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第28回】

病院では医師から、『腰痛を治すには運動しましょう!ストレッチが良いですよ』などのアドバイスをされることがあります。

しかし、どんな運動やストレッチが良いのか具体的な指導がなく、わからなくて困った経験はありませんか?

また、WEBで検索するとたくさんの記事や動画などが出てきて、どれが自分に合うものか、やってよいのかどうかわからず、さらに混乱してしまいます。

下手にやってかえって悪化してしまうのも怖いし、はじめるのに躊躇してしまうかもしれません。

そのお気持ちは良くわかります。

ひと口に腰痛・坐骨神経痛と言っても、人によって症状は千差万別ですから、どのようなストレッチが適しているのかは文字通り一人ひとり違うのです。

筆者の腰痛トレーニング研究所では、一人ひとりの症状にあったストレッチやエクササイズを指導していますが、どのようなストレッチが適しているか、次のような基準で判断しています。

1.痛みが出る部位
2.痛みの出る動き、痛みがやわらぐ動き
3.ストレッチをしている時や、した後の感覚

この3つです。

このうち 1.痛みが出る部位 と 3.ストレッチをしている時、した後の感覚は、腰痛の方自身でも判断ができると思いますので、今回はその方法をお伝えしたいと思います。

なぜストレッチで腰痛・坐骨神経痛が改善するのか?

そもそも、なぜストレッチで腰痛や坐骨神経痛が改善するのでしょうか?

腰痛や坐骨神経痛の原因には様々なものがあります。例えば、病院では椎間板ヘルニアや腰椎分離すべり症など、背骨の異常や神経の圧迫が原因とされることがあります。

しかしそれ以上に多いのが、実は筋肉が原因の腰痛です。

過労や長時間同じ姿勢で座りっぱなし、または立ちっぱなし、睡眠不足、運動不足、ストレスなどがあると、筋肉がこり固まって血行不良をおこし、痛みをおこします。

これが腰や骨盤の周囲、脚などの筋肉におこると、腰痛や坐骨神経痛となるのです。

例えば、脊柱起立筋という背骨を支える筋肉がこり固まってしまうと、下の画像の赤いエリアのように、腰や殿部(お尻)に痛みをおこすことがあります。筋筋膜性疼痛症候群

本連載ではおなじみですが、このような筋肉由来の痛み症状を『筋筋膜性疼痛症候群(きんきんまくせいとうつうしょうこうぐん)』といいます。

また、筋肉内にできた痛みの原因となるしこり状の固まり(上図の✖印)を『トリガーポイント』と言います。

ストレッチでこり固まった筋肉を伸ばし、ゆるめると、この『トリガーポイント』がゆるみ、血行が回復します。

そのために痛みが改善するのです。

トリガーポイント』について詳しくは、以下のページをご覧下さい。

腰痛・坐骨神経痛のトリガーポイント治療

痛みの出やすい3つの部位

今回はおおまかに

(1)腰部(ベルトラインの上)
(2)殿部(ベルトラインの下)
(3)脚(ももの裏)

の3つの部位にわけ、それぞれの部位に痛みを起こす筋肉とそのストレッチを解説します。

ベルトラインとは、ズボンやスカートのベルトを締める部位という意味です。

以下の図をイメージしていただくとご理解いただけるでしょうか。痛みの出る部位

また、普通はそれぞれの部位で右か左か片側に痛みが出ていることが多いと思いますが、ストレッチは左右同じようにおこなってみましょう。

ストレッチをしている時、した後の感覚

ストレッチをしている時、また、した後の感覚により、そのストレッチが適しているかある程度判断することができます。

適している時の感覚は

【伸ばしている時】
○気持ちよい
○痛いけど気持ちよい
○痛いけど効く感じがある

【伸ばしたあと】
○伸ばしている時は痛いけど、そのあと楽になる感じがある
○血行が良くなる
○すーっとする
○軽くなる

などです。

逆に適していない時の感覚は

✖とても痛い、気持ちよくない
✖不快、嫌な感じがある
✖伸ばしたあとにかえって痛くなる

などです。

このような感覚が生じる場合は、ストレッチをおこなわないでください。

ストレッチをする際の注意

ストレッチを安全に効果的におこなうためには、いくつか注意するべきことがあります。ストレッチをする際の注意

ストレッチをする場所

・安定した平らな場所を選び、リラックスした服装・姿勢でおこなってください。
・布団やベッドの上では危ない場合があります。

無理に行なわない

・ストレッチは自分の身体の硬さにあわせておこなってください。
・これからご紹介する画像などと同じようにできなくても構いません。
・無理に行なうとかえって痛みが悪化してしまう場合があります。

以上の注意事項を良く理解しておこなってください。

それでは具体的なストレッチをご紹介していきます。

腰部の痛みを改善するストレッチ

腰部(ベルトラインの上)に痛みがある場合、原因になる筋肉とそのストレッチ方法には、次のようなものがあります。

【脊柱起立筋とそのストレッチ】脊柱起立筋

このような腰部の痛みを改善するストレッチは、以下のようにおこないます。

イスなどに腰かけ、脚をやや開きます。

膝の間に頭を入れるようにして、上半身を前に倒していきます。膝の間に頭を入れるようにして、上半身を前に倒していきます。

この時に、背中は大きく丸めず、股関節から体を倒すようにしてください。

図では手のひらを床につけていますが、そこまでできなくても可能なところまで前に屈めてみましょう。

そのまま力を抜いて深呼吸しながら、30秒~1分ほどストレッチします。

そしてゆっくりと上半身をおこして戻ります。

これを2~3回繰り返します。

この動作をすることに怖さがある場合は、少しずつゆっくりやってみてください。

※ご注意)
痛みのためにこの姿勢ができない、またはこの姿勢をとると症状が悪化する時はやめてください。

【腸腰筋】【腸腰筋】

このような腰部の痛みを改善するストレッチは、以下のようにおこないます。

軽く足を開いて立ち、骨盤に手を当て、骨盤を前に押し出すようにしながら身体を軽く反らし、ゆっくり戻します。骨盤を前に押し出すようにしながら身体を軽く反らし、ゆっくり戻します

この時に、腰だけを反らさずに、脚から身体全体を反らすような意識でおこないます。

はじめは小さく反らすだけで良いので、楽~に軽く何度か繰り返してみましょう。

やっているうちに段々大きく反らせるようになるかもしれませんが、無理せず気持ちよい程度におこなってください。

この動作をすることに怖さがある場合は、少しずつゆっくりやってみてください。

※ご注意)
痛みのためにこの姿勢ができない、またはこの姿勢をとると症状が悪化する時はやめてください。

殿部の痛みを改善するストレッチ

殿部(ベルトラインの下)に痛みがある場合、原因になる筋肉とそのストレッチ方法には、次のようなものがあります。

【腰方形筋】【腰方形筋】

このような部位の痛みを改善するストレッチは、以下のようにおこないます。

仰向けから片膝を胸に引き寄せ、その膝を反対に倒して腰をひねるようにストレッチします。

殿部の痛みを改善するストレッチ適度に腰からお尻の筋肉が伸びたところで止め、そのまま力を抜いて深呼吸しながら、30秒~1分ほどストレッチします。

そしてゆっくりと脚を戻して仰向けに戻ります。

次に反対側も同じようにおこなってみましょう。

これを2~3回繰り返します。

この動作をすることに怖さがある場合は、少しずつゆっくりやってみてください。

※ご注意)
痛みのためにこの姿勢ができない、またはこの姿勢をとると症状が悪化する時はやめてください。

【中殿筋】【中殿筋】
【大殿筋】【大殿筋】

このような殿部の痛みを改善するストレッチは、以下のようにおこないます。

自宅で出来る!腰痛トレーニングDVDより

足の裏がしっかりつく高さのイスに、やや浅めに腰かけます。片方の足首を、反対の膝に乗せます。

片方の足首を、反対の膝に乗せます。

そのまま上半身を股関節から前に倒しますそのまま上半身を股関節から前に倒します。

背中や腰は丸め過ぎず、胸を脚に近づけるようにしていきます背中や腰は丸め過ぎず、胸を脚に近づけるようにしていきます。

適度にお尻の筋肉が伸びたところで止め、楽に深呼吸しながら力を抜き、30秒~1分ほど伸ばします。

終わったら上半身をゆっくり戻し、反対の足も同じようにおこないます。

これを片側2~3回ずつおこなってみましょう。

※ご注意)
痛みのためにこの姿勢ができない、またはこの姿勢をとると症状が悪化する時はやめてください。

脚(ももの裏側)の痛みを改善するストレッチ

脚(ももの裏側)に痛みがある場合、原因になる筋肉とそのストレッチ方法には、次のようなものがあります。

【ハムストリング】【ハムストリング】

自宅で出来る!腰痛トレーニングDVDより

このストレッチでは、バスタオルなどを使用します。

仰向けになり、バスタオルを片脚のつま先あたりにかけます。仰向けになり、バスタオルを片脚のつま先あたりにかけます

そこからバスタオルを引っ張るようにして脚を上に伸ばしていきます。脚を上に伸ばしていきます

適度に腿裏からアキレス腱が伸びたところで止め、楽に深呼吸しながら力を抜き、30秒~1分ほど伸ばします。

終わったら脚をゆっくり戻し、反対の足も同じようにおこないます。

これを片側2~3回ずつおこなってみましょう。

※ご注意)
痛みのためにこの姿勢ができない、またはこの姿勢をとると症状が悪化する時はやめてください。

また、膝の裏を両手で持つ方法や、座ってタオルで伸ばす方法などもありますので、次の画像を参考におこなってみましょう。膝の裏を両手で持つ方法や、座ってタオルで伸ばす方法

また腰の痛みをやわらげるストレッチについては、本連載で以前詳しく記事にしております。よろしければそちらもぜひご覧いただき、参考になさってください。

慢性腰痛を改善!誰でも簡単にできて効果的な6つのストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第21回】

その他以下の記事で様々な腰痛改善エクササイズをご紹介しております。
ぜひお読みください。

ヘルニア・狭窄症|ストレッチで改善する座っている時の痛みやしびれ【川口陽海の腰痛改善教室 第8回】

1日10回で腰痛・坐骨神経痛を改善!|誰でもできる簡単ヒップリフトエクササイズ【川口陽海の腰痛改善教室 第10回】

1日10回で反り腰を改善!イスに座ってできる簡単腰丸めストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第12回】

ヘルニア・狭窄症|「座ったあと腰が伸びない、痛い」を改善する簡単エクササイズ【川口陽海の腰痛改善教室 第14回】

椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症|手術をせずに治すトレーニング法【川口陽海の腰痛改善教室 第19回】

ヘルニア・狭窄症・坐骨神経痛 太もも裏の痛みやしびれを改善するストレッチ&トレーニング【川口陽海の腰痛改善教室 第25回】


文・指導/川口陽海
厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。

【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616
http://www.re-studio.jp/index.html

 

 

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