富山で出張料理のすし職人だった木場谷光洋(きばたに・みつひろ)さんが、この4月に念願の店を持ちました。店は富山ではなく、金沢の彦三町というところ。粋な街並みが軒を連ねる一角です。
最初に富山で木場谷さんの「江戸前」の握りを楽しんだのは、今年の2月のこと。こはだ、まぐろ、あなごといった昔ながらの「江戸前」のすし種に丁寧な仕事が施されてあって、握る技にも光るものがありました。あまりの美味しさに、店がまだできてもいないのに、その時6月の予約をさせていただきました。
金沢の新しいお店は、9席でいっぱいというカウンター席のみの鮨屋です。はじめに地酒を片手に、地物の肴をつまみで楽しみ、そのあと握りを10貫以上も堪能しました。
つまみでは時期の蒸しあわびの香り高さ、のどぐろの焼き物の脂の切れ具合は出色でした。
握りでは、「こはだ」も「まぐろ」も「とりがい」も驚くほどの美味しさでしたが、とりわけ素晴らしかったのが、築地から届いたばかりの「あなご」。ツメがうっすらと塗られた握りは、脂がのって香り高く、口に運ぶと、酸味の程よく効いた酢めしと渾然一体になって消えてゆきました。
東京でも滅多に味わえない秀逸な江戸前の「あなご」の握りが、金沢でいただけるお店です。
【鮨木場谷】
住所/石川県金沢市彦三町1-8-26 1F
TEL/076-256-1218
営業時間/17:00~21:00
定休日 /日曜日(不定休あり)
文/山本益博
料理評論家・落語評論家。1948年、東京生まれ。大学の卒論「桂文楽の世界」がそのまま出版され、評論家としての仕事をスタート。TV「花王名人劇場」(関西テレビ系列)のプロデューサーを務めた後、料理中心の評論活動に入る。
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