【山本益博の「ひと皿の歳時記」~第131回】
![まぐろ。](https://serai.jp/wp-content/uploads/2016/05/bf3f22da3e2c59d6615865694661bd8d-300x225.jpg)
まぐろの漬けの握り。
日本一の米どころとして知られる新潟県の南魚沼、それも八海山のふもと、新幹線の駅でいえば浦佐にほど近いところに『龍寿し』はあります。
先日、この店で鄙にも稀な握り寿しをいただいてきました。寿しは、じつは酢めし、つまり「飯」を食べる料理です。とはいえ、新米を炊いて握っても、ご飯は粘るだけ。米粒が口の中でほどけず、寿し種と渾然一体になりません。古米を枯らしてから炊き上げると、ほどよい酢めしができあがります。
![こはだ。](https://serai.jp/wp-content/uploads/2016/05/5a546a11d6b315f60728e69fc2fe2244-300x225.jpg)
こはだの握り。
![あなご。](https://serai.jp/wp-content/uploads/2016/05/dca1e0d07ad9a7f7233f28c2da02dc08-300x225.jpg)
あなごの握り。
『龍寿し』の酢めしは、もう少し酢が効いていてもいいかなとは思いましたが、地方の寿し屋さんの酢めしにしては、かなり上等なできばえです。
この酢めしに、まぐろの漬け(赤身を醤油につけたもの)、こはだ、穴子の「江戸前トリオ」が、じつにいい相性を見せてくれました。とりわけ驚いたのが「こはだ」です。こはだは扱いが非常に難しく、締め方が足りないために水っぽくなったり、中には生臭さを感じるものも少なくありません。
その点、『龍寿し』では、しっかり酢締めされたこはだが姿良く握られ、本物の「江戸前」を彷彿とさせます。握りの姿というのは、昔から「扇の地紙」の形に握るようにと、寿し職人の間で伝えられてきました。握りを横から見ると、理想的な流線型に握られていて、しかも、寿し種と酢めしのバランスがとてもいいのです。
さらに、地元ならではの握りとして「椎茸のコンフィ」が出てきました。
肉厚の椎茸を油煮にしたもので、滋味に富んでいて、口に含んだときの食感がなんと、アワビそっくりです。同店の寿し職人・佐藤さんは40代。親である先代の跡をついだ2代目ですが、寿しの握り方などは、ほとんど独学だそうです。季節を変えて、また訪れたい寿し屋さんです。
![椎茸のコンフィ。](https://serai.jp/wp-content/uploads/2016/05/56b3e9733ffc34624c8754394ed2d574-300x225.jpg)
食感がアワビそっくりな椎茸のコンフィ。
![d9b363134df8f4c8545cc4d7e12ec74f-225x300](https://serai.jp/wp-content/uploads/2016/05/d9b363134df8f4c8545cc4d7e12ec74f-225x300-1.jpg)
主人の佐藤さん(向かって右)と。
■龍寿し
住所/新潟県南魚沼市大崎1838-1
TEL/025-779-2169
営業時間/平日18:00~22:30(L.O.22:00)
日曜・祝日18:00~21:30(L.O.21:00)
昼12:00~13:30(要確認、酢めしがなくなり次第終了)
定休日/水曜日(予約の状況で変更の場合あり )
http://www.ryu-zushi.com/
文/山本益博
料理評論家・落語評論家。1948年、東京生まれ。大学の卒論「桂文楽の世界」がそのまま出版され、評論家としての仕事をスタート。TV「花王名人劇場」(関西テレビ系列)のプロデューサーを務めた後、料理中心の評論活動に入る。
![](https://serai.jp/wp-content/uploads/2016/05/56b3e9733ffc34624c8754394ed2d574-1.jpg)