文・写真/山本益博
東京・冨岡にてんぷら屋『ふく庵』が開店したのは、今年の6月のこと。当初は、てんぷら屋と言いながら、うどんも品書きに載せている店でした。
修業先の『みかわ是山居』のご主人・早乙女哲哉さんから、「せっかく、うちでてんぷらを勉強したのだから、てんぷら専門でやってみたら」とアドバイスされ、9月から「みかわ是山居早乙女哲哉の愛弟子の店」という幟を店の前に掲げて、てんぷら専門店になりました。
店の前と言っても、店は1階と3階がラーメン屋というビルの2階にあります。カウンターとテーブル席で、夫婦二人で切り盛りしています。
ランチメニューは「えび天丼」が650円、「えび穴子天丼」750円、「穴子天丼」850円、「おまかせ定食」(えび、きす、いか、野菜、穴子)でも950円という破格の値段。夜はさらに驚くべきことに、3500円のコースのみです。
私は9月からは、毎週出かけ、昼夜すべてのメニューを制覇しました。きす、いか、あなご、なすのてんぷらは、「みかわ是山居」で修業したことが分かる、達人・早乙女さん直伝の香り高い見事なてんぷらです。
きすのさっくりとした味わい、いかの柔らかくて甘い味わい、しっかりこんがり揚げて、持ち味を最大限に引き出した穴子、丼でも塩や天つゆでいただいても、満足すること請け合いです。その丼のつゆのかかり具合が、じつに精妙で、私のお気に入り。
いま、東京でいちばん応援し甲斐のあるてんぷら屋さんです。
【今日のお店】
『ふく庵』
■住所:東京都江東区富岡1-22-26杉田ビル2F
■営業時間:営業時間:11:45~13:30(売り切れ次第終了)、18:00~22:00
■定休日:日曜、土曜ランチ休み
■電話: 03-5646-6365
文/山本益博
料理評論家・落語評論家。1948年、東京生まれ。大学の卒論「桂文楽の世界」がそのまま出版され、評論家としての仕事をスタート。TV「花王名人劇場」(関西テレビ系列)のプロデューサーを務めた後、料理中心の評論活動に入る。