今回は、私が北陸随一と感じている、とっておきの日本料理店をご紹介します。
富山にある「御料理ふじ居」さん。常に地元の最上質の食材を使い、それに敬意を払った簡潔な調理を心がけるご主人・藤井寛徳さんの、料理人としての姿勢が私は大好きです。
日本料理は「椀刺しが華」と言われています。すなわち、「お椀」の出汁の引き具合と、「お造り」の包丁の冴えが、何よりも大切 というわけです。
先日伺った際のメニューは、「白えびのしんじょ椀」と「まこかれいのお造り」でした。
お椀の出汁は、昆布と鰹節で引きながら、どちらにも寄りかかっていない、まことに透き通った味わいでした。気持ちを落ち着かせて、集中力を高めて探しに行かないと、出汁の真髄に出会えない、そんな「お椀」でした。
「お造り」も豪華な三点盛りではなく、白身のかれいを三切れ盛りつけたシンプル極まりないもの。かれいの刺身の表面がきらりと輝き、まるで新雪のようなまぶしさでした。
何もつけずに一切れいただくと、かれいの香りが立ち昇り、噛めば甘みがにじみ出てきます。そこへ能登の塩をほんのわずかに口へ含むと、旨味がじわじわと広がりました。
〆てから8時間経ったまこがれいは、旬の味わいを全開させていました。
藤井寛徳さん40歳、いま、日本で指折りの俊英料理人のひとりです。
【御料理ふじ居】
住所/富山県富山市五福2区5385-5
TEL/076-471-5555(予約制)
営業時間/昼11:30~14:00(L.O.13:30) 夜17:30~22:00(L.O.21:30)
定休日/月曜日・第3火曜日
http://www.oryouri-fujii.jp/
文/山本益博
料理評論家・落語評論家。1948年、東京生まれ。大学の卒論「桂文楽の世界」がそのまま出版され、評論家としての仕事をスタート。TV「花王名人劇場」(関西テレビ系列)のプロデューサーを務めた後、料理中心の評論活動に入る。