宮城県といえば、伊達政宗ゆかりの仙台、美しい松島、牛タン、ずんだ餅といったグルメが思い浮かびますが、実は全国有数の酒どころでもあります。豊かな自然に恵まれた宮城県では、質の高い米と清らかな水を活かした絶品の日本酒が数多く醸造されています。今回は、宮城県の日本酒の魅力をご紹介します。

文/山内祐治

目次
宮城の日本酒が全国的に有名である理由
宮城を代表する銘酒「浦霞」の魅力
寿司に最適な「日高見」の個性
宮城県の日本酒が金賞を獲得する実力
宮城県で見つけるレアな日本酒の世界
宮城の日本酒で楽しむフルーティーな味わい
まとめ

宮城の日本酒が全国的に有名である理由

宮城県の日本酒が有名であることには理由があります。まず第一に、宮城県は東北有数の米どころです。栗原市や富谷市をはじめ、県内各地で良質な米が栽培されており、電車の車窓からも一面に広がる田園風景を望むことができます。

また、宮城県の日本酒づくりの特徴として注目すべきは、酒造好適米(酒米)だけでなく、私たちが普段食べている飯米を使った純米酒づくりが得意だということです。1986年に宮城県酒造組合が『みやぎ・純米酒の県宣言』を行い、当時はササニシキ100%の純米酒づくりを推進しました。現在も『もっと宮城・純米酒の県』として“純米志向”を続け、特定名称酒比率は約9割と公表されています。

宮城県には20を超える酒蔵があり、それぞれが独自の個性を持った日本酒を醸造しています。山間部と沿岸部の地理的な違いも、多様な味わいを生み出す要因となっています。さらに、戦国時代の伊達政宗公の時代から続く酒造りの伝統も、現在の高い技術力の礎となっているのです。

宮城を代表する銘酒「浦霞」の魅力

宮城県を代表する日本酒といえば、まず「浦霞」(うらかすみ)が挙げられます。1724年創業の株式会社佐浦が醸造するこの銘酒は、古来の歌語で、源実朝の作に“浦霞”の語が見えることなどから命名されたとしています。

浦霞」の最大の特徴は、宮城県沿岸部で造られる純米酒らしさと言える清らかで上品な味わいです。一般的に純米酒というと重厚な印象を持たれがちですが、「浦霞」をはじめとする沿岸部の純米酒は、驚くほどすっきりとして綺麗な味わいを誇ります。これは、宮城沖で獲れる新鮮な魚介類との相性を考えた酒造りの結果でもあります。

特に人気が高いのが「浦霞 禅」です。山田錦とトヨニシキを使用した純米吟醸で、穏やかでありながら洗練された味わいが楽しめる、平成の初期から高い評価を受け続けている逸品です。また、最近では「浦霞 十二」という、かつて配布されていたきょうかい12号酵母(別名浦霞酵母)を自社復活させた限定酒も注目を集めています。

寿司に最適な「日高見」の個性

宮城県のもう一つの代表的な銘柄が「日高見」(ひたかみ)です。石巻市の平孝酒造が手掛けるこの日本酒は、北上川の古い呼び名に由来する歴史ある銘柄です。

日高見」の最大の特徴は、寿司との相性に特化していることです。“魚でやるなら日高見だっちゃ!”というキャッチフレーズの通り、新鮮な寿司ネタを引き立てる味わいが追求されています。蔵元が“寿司王子”と呼ばれるほど寿司を愛していることでも知られています。

代表的な辛口純米は、水のように清らかでキレのある味わいが特徴で、脂の乗った魚介類との相性は抜群です。「魚ラベル」シリーズや「弥助」といったラインナップからも、寿司に対する強いこだわりが感じられます。

宮城県の日本酒が金賞を獲得する実力

宮城県の日本酒は、全国新酒鑑評会での金賞受賞数でも上位に名を連ねます。東北勢全体のレベルの高さの中でも、宮城県は多くの酒蔵が金賞を受賞しており、その技術力の高さが全国的に認められています。

金賞常連の銘柄として、まず「勝山」(かつやま)が挙げられます。勝山酒造は元禄年間創業、伊達家の御用蔵(安政4年拝命)としての系譜を持つ老舗蔵で、「勝山」「戦勝政宗」などで知られています。また新澤醸造店の「伯楽星」(はくらくせい)は、丁寧な精米技術で知られ、上品で綺麗な酒質が評価されています。さらに阿部勘酒造の「阿部勘」(あべかん)は、水のようにスルスルと飲めてしまう滑らかな味わいで人気を博しています。これらの酒蔵に共通するのは、優れた原料米と豊富な水資源を活かした高い技術力です。

また新澤醸造店では、かつて市場に残った酒を自主的に回収して市中在庫の品質管理までも徹底していた逸話もあり、実際に販売店などの説明として“出荷後3〜6か月程度経過・コンディション不良は回収・交換”との運用が紹介されるなど、品質への強いこだわりがうかがえます。

宮城県で見つけるレアな日本酒の世界

宮城県には、通常では手に入らないレアな日本酒も数多く存在します。季節限定や数量限定で造られるこれらの特別な一本を見つけるのも、日本酒の楽しみの一つです。

レアで高級なものとしては、新澤醸造店が手掛ける、精米歩合1%を切る(0.85%)極限まで磨き込んだ日本酒があります(https://serai.jp/gourmet/1235267)。東京の有名酒販店などで入手可能な、まさにプレミアムな逸品です。

ユニークなお酒としては、栗原市の「綿屋」(金の井酒造)があります。地元で有名な納豆屋さんが栽培した美山錦を使って醸造する“川口納豆ラベル”の日本酒は、本来は酒造りの天敵である納豆をフィーチャーした面白さが話題となっています。これも季節限定で、その時期を逃すと次年度まで待たなければなりません。

「綿屋 川口納豆 ひやおろし 特別純米酒 」(金の井酒造)

また、宮城県産の酒米「吟のいろは」を使用した純米吟醸クラス以上の日本酒も注目株です。「宮寒梅」(寒梅酒造)は、華やかな香りとまろやかな味わいが特徴で、今後さらに人気となりそうです。

宮城の日本酒で楽しむフルーティーな味わい

近年、宮城県の日本酒は、フルーティーで華やかな香りを持つ酒質が注目を集めています。これらの味わいを生み出しているのが、宮城県独自の酵母技術です。

宮城県には「宮城A酵母」と「宮城B酵母」という県独自の酵母があり、特にB酵母は比較的華やかな香りを生み出しやすいことで知られています。これらを純米吟醸や純米大吟醸に使用することで、エレガントで上品な香りの日本酒が誕生しています。

また、先述の「吟のいろは」という酒米も、フルーティーな日本酒造りには向く存在です。この米を使用した吟醸酒は、華やかな吟醸香とまろやかな味わいで造られることが多く、親しみやすい仕上がりになっています。

まとめ

宮城県の日本酒は、豊かな自然環境と長年培われた技術、そして革新への挑戦が見事に調和した、まさに日本酒文化の結晶といえる存在です。沿岸部と山間部という地理的な多様性が生み出す味わいの幅広さ、伝統的なタイプの純米酒から現代的なフルーティーな酒まで、あらゆるニーズに応える豊富なラインナップが魅力です。

宮城県には今回、紹介しきれなかった優秀な酒蔵がまだまだ存在します。仙台を訪れた際には、ぜひ地元の酒販店を覗いてみてください。駅ビル内の「むとう屋」では熟成酒なども扱っており、お土産選びも楽しめます。角打スペースもあり、その場で宮城で造られた旬の日本酒を試飲することも可能です。

山内祐治(やまうち・ゆうじ)/「湯島天神下 すし初」四代目。講師、テイスター。第1回 日本ソムリエ協会SAKE DIPLOMAコンクール優勝。同協会機関誌『Sommelier』にて日本酒記事を執筆。ソムリエ、チーズの資格も持ち、大手ワインスクールにて、日本酒の授業を行なっている。また、新潟大学大学院にて日本酒学の修士論文を執筆。研究対象は日本酒ペアリング。一貫ごとに解説が入る講義のような店舗での体験が好評を博しており、味わいの背景から蔵元のストーリーまでを交えた丁寧なペアリングを継続している。多岐にわたる食材に対して重なりあう日本酒を提案し、「寿司店というより日本酒ペアリングの店」と評されることも。

構成/土田貴史

 

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