フルーツ王国として知られる山形県は今年、「やまがたフルーツ150周年」を祝う。葡萄の生産量は全国3位でワインは4位、県内ワイナリーは約20か所と増加している。高品質な地元産葡萄を使ったワインづくりが高い評価を得ている。

山形県は、江戸初期から続く葡萄栽培の歴史を有する、知る人ぞ知るわが国有数のワイン県だ。

国内外のコンクールで受賞多数日本ワインの最高峰を目指す

高畠ワイナリー

国内外のコンクールで受賞多数日本ワインの最高峰を目指す
高畠ワイナリー。
山形県最大規模のワイナリー。ショップ、有料試飲や軽食コーナーもある。
山形県東置賜郡高畠町大字糠野目2700-1
電話:0238・40・1840
営業時間:平日10時〜17時・土日祝日9時〜17時
定休日:無休

まず訪れたのは、高畠(たかはた)ワイナリー。長野県塩尻市で1932年(昭和7)に創業した「太田葡萄酒」が、1990年に高畠町に移ってきた。高畠町の地方創生の熱源だ。いまや、高畠町はデラウェアで生産量日本一を誇る。

「年間460トンくらいの葡萄を使用しています。56%が近隣の契約農家さんの葡萄です」と、同ワイナリー取締役の高橋直彦さんはいう。“企業ワイナリー”だからこその規模だ。サクランボの季節になると、観光客がワイナリーにも足を運び観光バスが列をなす。

右から、厳選した葡萄から世界基準の醸造でつくるフラッグシップワインの「高畠アルケイディア」の白と赤。左は地元の葡萄づくりの名手、大浦亮一氏圃場産のシャルドネ。

ワインの味も確かだ。「『高畠』という地名を冠したワイナリーで、世界に胸を張れるワインを100年かけてもつくる。その強い信念をもって、『100年構想』を掲げています」と、高橋さん。世界最大のワインコンテスト「IWC」で金賞やトロフィーを受賞。2024ジャパンワインチャレンジ銅賞受賞の「2020 高畠L’OGRE BLEU(ローグルブルー) 青おに」は、メルローらしい滑らかさ。緻密で奥の深い味わいに、土地の豊かさが感じられた。

山形の自然風土が育むバラエティ豊かなワイン

次に向かったのは、隣町の上山市の“家業ワイナリー”のタケダワイナリーだ。創業1920年(大正9)。「このあたりは寒暖の差が激しいこともあって、いい葡萄ができるんです」と、2005年から社長を務める岸平典子さん。1990年代に4年間フランスに留学し修業を積んだ、日本における女性ワイン醸造家の草分けだ。

葡萄畑に雉(きじ)の声が響いていたのには驚いた。驚いたといえば、足元には、ロボット草刈り機が走っている。下草を刈るのだ。樹齢約80年を誇る古木のマスカット・ベーリーAを用いた「ドメイヌ・タケダベリーA 古木」は、力強い深みがありつつ、繊細で飲み飽きない味わいだ。

野生の雉(きじ)が棲む葡萄畑が生む、優しく繊細な山形のテロワール(自然風土)を感じるワイン

タケダワイナリー

蔵王連峰のふもとにある自社圃場は合計約15ヘクタールの広さ。樹齢約80年というマスカット・ベーリーA(日本固有種の赤ワイン用の黒葡萄)の古木群が、東南向きの急斜面に広がる。自社圃場産葡萄のワインは「ドメイヌ・タケダ」シリーズ。雉は同社ワインのトレードマーク。
日本のワイナリーで初の女性栽培醸造責任者兼社長として知られる、5代目の岸平典子さん(右)に話を聞く片山氏。低農薬無化学肥料での葡萄栽培を展開。樽・瓶熟成をしている地下の貯蔵庫にて。
ショップで無料試飲も可。
山形県上山市四ツ谷2-6-1
電話:023・672・0040
営業時間:10時~ 12時・13時~ 17時
定休日:4月~11月:日曜・12月〜 3月:土日祝日
※ワイナリー見学は要事前予約。

山形県の葡萄栽培発祥の地「鳥上坂」にも自社圃場を持つ、東北最古のワイナリー

酒井ワイナリー

赤湯温泉郷の街中に佇む家族経営のワイナリー。ろ過機を一切使わない、昔ながらのノンフィルターワインが特徴。
5代目の酒井一平さんは、地域の未来を見据えた葡萄栽培・ワイン醸造を目指す。
1892年(明治25)創業の歴史を誇る。鳥上坂の自社圃場では、羊を放牧して雑草を食べさせる自然農法で栽培。
山形県南陽市赤湯980
電話:0238・43・2043
営業時間:13時~ 16時
定休日:水曜、祝日ほか(要問い合わせ)

山形県最古の1892年(明治25)創業の酒井ワイナリー5代目の酒井一平さんは、山形最古の葡萄栽培地区「鳥上坂(とりあげざか)」の葡萄畑に羊を放って、有機栽培を行なう。

「傾斜地で葡萄を自然栽培するために羊を飼ったことで、“循環型ワインづくり”の最後のピースがはまったんです」と酒井さん。

羊は畑に茂った雑草や、葡萄の搾りかすを食べる。羊のフンを堆肥にし、畑に戻す。羊の肉もまた、ボランティアのワインづくり参加者を集めた催しの際に、美味しくいただくそうだ。赤湯地区の葡萄で醸した赤の「赤湯」は濃厚な味わい。しっかりしたタンニンと果実の旨味が感じられる。

家業ワイナリーと、企業ワイナリー。どちらもあるから、バラエティ豊かなワインの技術と文化が育つ。土地に根ざした丁寧な営みが、静かに実を結びつつある。フルーツ王国山形は、まぎれもなく“ワイン王国”でもある。

世界的に活躍する奥田政行シェフの新しいレストラン

アル・ケッチァーノ コンチェルト

料理は「蔵王和牛と稀少な山菜オオナルコユリのグラチネ(グラタン焼き)山形赤ワインソース添え」。ディナーコース5500円~。

山形県出身の著名シェフが運営。山形ワインとともに、山形県産の厳選食材を使ったイタリアンが味わえる。山形駅至近。

山形県山形市双葉町1-2-38 やまぎん県民ホール 雁木棟
電話:023・616・7040
営業時間:11時30分~ 15時・17時〜21時
定休日:火曜、第2・第4水曜

各ワイナリーとも、山形新幹線の
最寄りの駅からタクシーで5 〜10分前後。

~宮城・山形・福島~鉄道で酒(しゅ)っとめぐろう!
南東北エキタグ スタンプラリー

南東北エリアの酒どころを巡る「エキタグ スタンプラリー」を開催中。対象箇所のスタンプを集めて条件を達成すると、特製「王冠マグネット」がもらえるほか、お酒などを抽選でプレゼント。この機会に、南東北の美味しいお酒に出会う鉄道旅をお楽しみください!

提供/JR東日本 文/片山 修

 

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