7月5日に発表・発売された新型ジムニーが話題である。先代ジムニー(JB23)から20年。4代目となる今回のジムニー、何がそんなに話題になっているのか?
もちろん、多くの理由が存在するだろう。しかし、最も大きな理由、それは、今の時代に発表された、無骨で四角いボディデザインだ。
新型車である以上、刷新された外観が耳目を集めるのは当然のことだ。しかし、この新型ジムニーに関しては、それとはちょっと違う。今回のモデルチェンジに際し、新型ジムニーは原点回帰ともいえる無骨な四角いボディで発表されたのだ。
1970年に軽自動車の四輪駆動車として発売され、約50年もの間生産されている、ジムニー。
先代のJB23型はそれまでの箱型ボディとは一線を画した丸みを帯びたボディで、従来のジムニーのイメージを覆す、スタイリッシュでより街乗りを意識したデザインであったといえる。この先代も、20年もの間モデルチェンジを行わなかったということが、ファンから愛されたモデルであったという証であるといえるだろう。
しかし、今回の新型はその先代のさらに前(JA11)をイメージさせる、あえて言うなら「旧型のリメイク」のようなボディデザインで登場した。
考えてみれば、21世紀に入って初めてモデルチェンジしたジムニーである。今の技術を持ってすれば、超未来的なボディをまとった新型ジムニーであったとしてもおかしくない。しかし、スズキはあえてそうしなかった。丸目のヘッドライト、角ばったボディ。それは、ジムニーというクルマはどういう存在なのか、ファンがジムニーに何を望んでいるのか、ということを真摯に検討した結果ではないだろうか。本格オフローダーとしての実用性からくる機能美。「日本が世界に誇る唯一無二のコンパクト4WD」としての誇り。そういったものが、今回の新型ジムニーの外観=ボディデザインに凝縮され、現れている。
武骨ともいえる四角いボディは、誰が見ても『本格四駆』と思えるデザインだ。この原点回帰ともいえるデザインが、現在発売されているクルマとは違う新しいカタチに見えるというのは、なんとも皮肉な気もするが、そのようなメーカーの姿勢を敏感に察知した従来からのファンは拍手し、新たに知った人々(特に若い世代)は「こんなにコンパクトなのに本格オフローダーのクルマがあったんだ」という驚きとともに迎え入れられているのだと思う。
今回の新型は、フロントグリルやウインカーレンズなど、歴代ジムニーのデザインを踏襲している部分も随所にある。新型とはいえ、今までのジムニーをリスペクトしたこのデザインは、ファンであればあるほど、たまらないデザインであるといえるだろう。
さらにアクセサリーパーツも旧ジムニーをイメージしたフロントグリルや、「ヘリテージスタイル」、「リバイバルスタイル」と銘打った以前のモデルと同様のサイドデカールなど、従来のファンにとっては涙もののアクセサリーも用意されている。
【ヘリテージスタイル】
【リバイバルスタイル】
もちろん、従来からのファンサービスだけではない。今回の新型、先代は3色だったボディカラーが9色に大幅アップ。しかもそのうちの4色にはルーフトップの色が変わる2トーン仕様が設定されているので、合計13色という豊富なカラーバリエーションとなっている。さらにイメージカラーのキネティックイエローには受注生産でボンネットの色もブラックに塗装した「ブラックトップ2トーン」も設定されており、新たなユーザーとなる人々の選択肢がグンと広がった。
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話題にすべき点は数多くある新型ジムニー。だが、これだけモデルチェンジで話題を集めるクルマというのもあまりない。そして、その理由は、メーカーの製品に対する矜持、ユーザーの期待に応える姿勢、それらを文字通り体現した、コンパクト4WDとしてのボディデザインなのだ。
全長× 全幅× 全高:3395×1475×1725㎜
ホイールベース:2250㎜
車両重量:1030㎏(4ATは1040kg)
エンジン:水冷4サイクル直列3気筒インタークーラーターボ
総排気量:0.658L
最高出力:47kW<64PS>/6000rpm
最大トルク:96N・m/3500rpm:9.8kg-m
駆動方式:パートタイム4WD
燃料消費率:16.2㎞/l(WLTCモード)
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン 40L
ミッション:5速MT(ATは4速)
サスペンション:前・後:3リンクリジッドアクスル式コイルスプリング
ブレーキ形式:前:ディスク 後:リーディング・トレーリング
乗車定員:4名
メーカー希望小売価格(消費税8%込み):174万4200円(ATは184万1400円)
【ジムニースペシャルサイト】
http://www.suzuki.co.jp/car/jimny/special/
文/天野光法