文・石川真禧照(自動車生活探険家)

4代目は2017年に発表された。現行モデルは2025年4月に大幅改良を受けたモデルで、フロントまわりのデザインを変更した。

2025年3月、英国、ゲイドンのアストンマーティン本社は大きな喜びに包まれていた。

英国王の任命により王室御用達認定(ロイヤルワラント)が決定するというニュースが入ったのだ。ロイヤルワラントが授与されたことで、アストンマーティンは112年に及ぶ同社の歴史の中で、初めて国王からのロイヤルワラントを使える名誉を受けたことになった。

前期型と大きく変わったグリルは、開口部が大きくなり、空気流量が約30%も増加した。
リアデザインは大きくは変わっていない。キリッと引き締まったうしろ姿も美しい。
ホイールベース2705mm、全長4495mm。ホイールベースはトヨタプリウスよりも短く、全長はカローラツーリングと同じ。コンパクトなサイズだ。
左右4本出しのマフラーはV8、4Lツインターボから迫力あるサウンドが響く。太いリアタイヤが665psのパワーを路面に伝える。

ロイヤルワラントというのは、英国王室がそれぞれに気に入った製品の生産者に対して、御用達リストに加えることができ、生産者がそれを受け入れると、自社の製品に王室の紋章を入れることが許されるというもの。1840年にこの制度が設けられ、5年ごとに協会の審査があり、不適格だと認定が取り消されてしまう。しかもその名誉を授けることができたのはエリザベス2世、エディンバラ公フィリップ王、ウェールズ皇太子の3名だけ。エリザベス2世とフィリップ王はすでに故人になっている。

最近になりウェールズ皇太子のチャールズ3世が国王となり、ロイヤルワラントが新しくなった。その新しいロイヤルワラントの第1号がアストンマーティンに授けられたというわけだ。

チャールズ3世がプリンスオブウェールズから英国王になり、はじめてのロイヤルワラントがアストンマーティンに授けられた。
握りの太いハンドルは下部を直線にし、乗り降りしやすさを助けている。
豪華さよりも機能を重視した座席だが、サーキット走行にも耐えられるホールド性を確保している。

アストンマーティンとチャールズ国王との係わりは1973年にアストンマーティンオーナーズクラブの一員になったときから。それ以前、1960年代のDB6ヴォランテがチャールズ国王の愛車だった。この車両は2011年の結婚式でウィリアム王子(当時)とキャサリン妃を乗せ、ザ・マルに集まった大勢の観客の前を走行している。

そのときのDB6ヴォランテの美しく走るオープンカーの姿は話題になった。アストンマーティンの車体の美しさは、最新モデルのヴァンテージ・ロードスターにも確実に受け継がれていた。

ヴァンテージはアストンマーティンの歴史の中で、1950年代に製造されたDB2のうち高性能車の名称として用いられたオープントップモデル。後部座席のない純粋な2人乗りスポーツカーは、現在のアストンマーティンの車の中でも、もっとも小型、軽量の車でもある。ヴァンテージにはクーペとオープンカー(ヴォランテ)がある。普通、クーペを開発してから、屋根を切り取ったオープンカーを開発するのだが、ヴァンテージは両車を同時に開発したという。そのため、独自に開発された車と同じなので、乗り心地などの味付けはクーペとは異なる性格が与えられている。

V型8気筒エンジンはエンジンルームの奥の低い位置に搭載され、重量バランスの最適化に貢献している。
エンジンカバーに貼られているエンジン製作担当者の名前を記載したプレート。熟練工が組み上げたエンジンはバランスよく一気に6700回転まで上昇する。
最新のシフトレバーは小さなツマミ型。Pは独立して位置し、マニュアルモードの選択もスイッチを押すだけ。
ATは8速。マニュアルモードはパドルレバーでシフトする。

心臓部のエンジンはドイツ、メルセデスAMGの協力の元、アストンマーティンの技術者が一基ずつ手作業で組み上げている。ボンネットを開けると、その技術者の名前が刻まれたネームプレートがエンジンカバーに誇らしげに貼られている。V8、4Lツインターボエンジンは車体前部に搭載され、後輪を駆動する。8速自動変速機での走行は相当に速く、停止から時速100キロまで4秒台で走り切った。最新の制御技術の進化も素晴らしく、665馬力のパワーは無駄なく後輪から路面に伝えられる。走る、曲がる、停まるの先進技術のおかげで、V8エンジンは1100回転あたりからアクセルを踏むと、即座に加速を開始し、100km/hでの巡航を楽しませてくれる。

幌の開閉はコンソール上のスイッチの押し上げ/下げで行う。その作業はクルマが時速50km/h以内で走行中なら、約6秒という短時間で行える。
天井の部分が上にくるので、トノカバーをかけなくてもスッキリと収まる。マツダロードスターも同じ方式だが手動式。
しっかりとした造りの幌は8層構造。300km/h以上の最高速にも耐える。幌の色はレッド、ブルー、ブラック、シルバーの4色が選べる。

最新技術は幌にも生かされている。8層から成る断熱材で構成されている幌は、閉じた状態でも室内の圧迫感もなく、最高速の時速300キロ以上にも耐える。さらに開閉に関しては、時速50キロまでなら走行中でも自動開閉が可能だった。開閉の速さも、大抵のオープンカーは20秒前後かかるのだが、この車はわずか7秒で開閉できた。もちろん幌が収納された姿もバランスがとれて、美しいことは言うまでもない。

他社ではあまり見かけないフレームレスのドアミラーを採用。視界が広く、見やすい。
開口部は高めで入口も大きくはないが、中の左右幅は1m以上あり、高さも確保されている。トランクのフタに雨傘が付いているが、これは伝統的アストンマーティン純正パーツ。
ホイール径と同じ位、大径なベンチレーテッドディスクブレーキ。時速300キロオーバーのスポーツカーは停まる性能も重要だ。

新型ヴァンテージ・ロードスターは最高水準の技術と性能を与えられたスーパーオープンスポーツカー。搭載された先進技術を駆使しながらのスポーツ走行も刺激的で楽しいが、この美しく、バランスのとれた姿は、誰もを惚れ惚れとさせる。観ているだけでもたのしく、走ればワクワクさせてくれる。ヴァンテージ・ロードスターは英国好きならガレージに収めておきたいロイヤルな1台だ。

アストンマーティン/ヴァンテージ ロードスター

全長×全幅×全高4495×1980×1285mm
ホイールベース2705mm
車両重量1765kg
エンジン3980cc
最高出力665ps/6000rpm
最大トルク800Nm/2750~6000rpm
駆動形式後輪駆動
燃料消費量8.13(CEU WLTPモード)km/L(WLTC)   
使用燃料/容量                73L
ミッション形式8速自動
サスペンション形式前:ダブルウィッシュボーン/後:マルチリンク
ブレーキ形式前:ベンチレーテッドディスク/後:ベンチレーテッドディスク   
乗員定員2名
車両価格(税込)2860万円
問い合わせ先03-5797-7281

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
20代で自動車評論の世界に入り、年間200台以上の自動車に試乗すること半世紀。日常生活と自動車との関わりを考えた評価、評論を得意とする。

撮影/萩原文博

 

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