文/石川真禧照(自動車生活探険家)
ジープならではの四角い外観。無骨に見えるが、運転してみると最新の高級車の走りを体感できる。音もなくなめらかに加速する2Lエンジンを搭載し、乗り心地はまるでリムジンのように上質なのだ。
車に興味があるならば、「一度は乗ってみたい」と夢見る車があるだろう。それは運転手付きの英国製リムジンかもしれないし、時速300kmを誇るイタリア製のスポーツカーかもしれない。あるいは青春時代に憧れた車という人もいるかもしれない。ジープもまた、そんな“夢の車”のひとつだろう。
第二次世界大戦中の1941年に戦場の不整地で兵士を乗せて走るために開発されたジープは、もともとアメリカ軍の軍用車だった。一般市民がジープを購入できるようになったのは1955年、民間用ジープ「CJ‐5」が誕生して以降のこと。後席は設けられていたが、2ドア仕様で、ホイールベースも短く、山間部や河川地帯を走破するための特殊な車だった。
1987年に、CJシリーズの後継として、初代ジープラングラー(YJ)が登場。その後、約10年の周期でモデルチェンジを遂げ、2007年に登場した3代目ジープラングラー(JK)から、2ドア車に加えて4ドア車も発売された。
乗り心地の良さに驚かされる
今回試乗したのは、2018年に誕生した4代目のジープラングラー。外観は初代(YJ)から大きく変わっていない。しかしこの4代目は、運転してみると、その静かさ、軽やかさに驚かされる。街中はもとより、高速道路を時速100kmで快適に安全に走行できる車に進化しているからだ。
SUV(多目的スポーツ走行車)の元祖であるジープは、無骨で頑固な時代遅れの車と考えられがちだが、ジープラングラーの最新モデルはそうした固定観念をやすやすと裏切り、ジープ史上もっとも乗りやすい車となっている。
2Lガソリンターボエンジンで山間部も軽やかに走り抜ける
全高が1.85m近くあり、最低地上高も200mm。乗り込むには、ドアの下のステップに足をかけ、車によじ登るようにしなければならない。しかし、高い運転席からの見晴らしは抜群に良い。
いかつく見える車体にはアルミニウムやマグネシウムといった軽量かつ高強度な素材を惜し気もなく採用。外装の灯火類にはLEDを使用し省電力化を実現している。
運転席に座ると、ボンネットがよく見える。車体が四角いおかげで、1.9m近くある全幅にもかかわらず車体周囲の見切りが良く、狭い所へも難なく入っていける。この見切りの良さはジープの伝統で、本来はジャングルなどの道なき道を走るための設計である。
後退時の後方確認を補助するカメラや、衝突を防ぐための警告装置は標準装備。スマートフォンをつなげてナビゲーション、音楽を音声で操作できる機能も備える。
操縦性能も格段に向上。とくに4代目から登場した2Lガソリンターボ車は、車体前部が軽く、カーブの連続する山間路や高速道路で快適な操作性を楽しめる。
この最新型は“夢の車”ではなく、一度乗ると楽しくて手放したくなくなりそうな車なのだ。
【ジープ/ラングラー アンリミテッド サハラ】
全長× 全幅× 全高:4870×1895×1845mm
ホイールベース:3010mm
車両重量:1960kg
直列4気筒DOHCターボ/1995cc
最高出力:272PS/5250rpm
最大トルク:40.8㎏-m/3000rpm
駆動方式:後2輪+4輪駆動(選択式)
燃料消費率:11.5km/L(JC08モード)
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン 81L
ミッション形式:電子制御8速自動
サスペンション:前・後:コイルリジット
ブレーキ形式:前:ベンチレーテッドディスク 後:ディスク
乗車定員:5名
車両価格:590万円(税込み)
問い合わせ:ジープフリーコール 0120・712・812
文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦
※この記事は『サライ』本誌2020年5月号より転載しました。